【撮影基礎講座2】シャッター速度とは?動き・明るさを表現する簡単な方法
この記事では、シャッター速度について解説していきます。
カメラのなかに入っている、シャッターという部品。
フィルムやイメージセンサーに「どれくらいの時間」光を取り込むのかを制御します。
このシャッター速度を操ることで、「時間」に関係する表現ができるようになりますよ。
一瞬の動きを切り取ったり、はたまた、流れる水のような形のないものを写真に写し出したり。
また、シャッター速度は「手ブレ」を防ぐためにも重要です。
カメラの露出を使いこなすために欠かせない、シャッター速度という概念。
どんなものなのか、具体的に見ていきましょう。
目次
【撮影基礎講座】全体のもくじはこちら
1:露出とは
2:シャッター速度とは
3:絞りと被写界深度
4:ISO感度とは
5:カメラの撮影モード P・A・S・M
6:マニュアル露出
7:露出計の種類
8:ピントとボケ
9:画角と焦点距離
10:ホワイトバランスと色温度
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シャッター速度とは
シャッター速度とは、カメラのシャッターが開く時間の長さのことです。
カメラのなかにあるシャッター。
普段は閉じていて、写真を撮影するその瞬間だけ、開いてフィルムやイメージセンサーに光を取り込む役割をもっています。
カメラのシャッター
たとえば、この写真を見てみましょう。
このフィルムカメラの裏蓋を開けると、シャッターがついています。
レンズを外すと、前側からもシャッターが見えます。
シャッターを切ると、「カシャッ」という音がして、シャッターが開きます。
このように開いているときだけ、フィルムに光が当たって写真が撮れるということになります。
デジタルカメラにも同じようにシャッターがついています。
(構造としては、フィルムのかわりにイメージセンサーがついているだけの違いです)
上で紹介した例は、2つとも「フォーカルプレーンシャッター」という、薄い金属や布の幕が開閉する形式のもの。
ほかの代表的なシャッター形式としては、レンズの中に組み込まれた「レンズシャッター」というものがあります。
ただし、フォーカルプレーンシャッターもレンズシャッターも役割は同じ。
どちらも、操作するときの考え方は同じです。
シャッター速度を変えるとどうなるの?
では、シャッター速度を変えるとどんな写真が撮れるのでしょうか?
「動き」の表現
まず、シャッター速度で変わるのが「動き」の表現です。
たとえば、走っている電車や自動車を撮ることを考えてみましょう。
速いシャッターを切ると、ほんの一瞬しか車体が写真に写りません。
そのため、被写体の電車が写る時間が「短い」ので止まって見えます。
シャッター速度が速い
いっぽう、こちらは上の写真に比べて遅いシャッター速度。
上の写真と違い、電車が動いた状態で写っています。
これは、シャッター速度が遅いと、被写体の電車が動いている間、写真に写り続けていたため。
電車が写真に写る時間が「長い」ので、遅いシャッター速度ではぶれて写ります。
シャッター速度が遅い
もうひとつ、わかりやすい例が「水」です。
川や滝。
水道から流れ落ちる水。
そんな水を撮影するときに、速いシャッター速度で撮ると、水が止まって写ります。
シャッター速度が速い
遅いシャッター速度では、水が動いた状態で写るので、線のようになります。
シャッター速度が遅い
高速シャッターとスローシャッター
シャッター速度で変化する「動き」の表現。
思い通りの表現をするには
・高速シャッター
と
・スローシャッター(低速シャッター)
を使い分けましょう。
動くものを止めて撮るには「高速シャッター」
動くものを止めて撮るには、「高速シャッター」を使います。
高速シャッターとは、一瞬しかシャッターが開かない設定のこと。
1/1000秒、1/2000秒、1/4000秒、1/8000秒といった、非常に短い時間だけシャッターが開きます。
「スローシャッター」で時間を表現
高速シャッターの反対がスローシャッター(低速シャッター)。
低速シャッターとは、おおむね1/15秒や1/8秒以下くらいの、比較的遅いシャッター速度のこと。
場合によっては1秒や10秒といった、とても長い時間、開けたままにすることもあります。
このことを「スローシャッター」といいます。
光を長時間取り込むことで、さまざまな表現が可能です。
川や滝を撮るときに、水がさーっと糸のように流れている写真。
夜空の星の写真。
自動車のテールライトが光の帯を引いている写真。
そういった写真は、スローシャッターを使うことで撮影できます。
場合によっては、例えば夜空の星を撮る場合など、数分〜1時間以上にわたってシャッターを開くことなどもあるくらいです。
シャッター速度で適正露出を合わせる
シャッター速度は写真の表現にも影響しますが、じつはそれよりも大切な役割があります。
それが、露出を適正露出に合わせるということです。
適正露出とは、昼間や夜、部屋の中など場所によって異なる明るさに合わせて、適切な量をフィルムやイメージセンサーに取り込むこと。
これにより、「明るすぎたり」「暗すぎたり」しない写真を撮ることができます。
※適正露出についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
シャッター速度と絞りの相関性
大切なのが、カメラの設定を適正露出に合わせるとき、シャッター速度を変えると、絞りや感度の数値も連動して変化する、ということです。
適正露出のときに、シャッター速度が1段速くなる(暗くなる)と絞りの数字(F値)は1つ明るくなる(数字が小さくなる)。
シャッター速度が1段遅くなると絞りの数字(F値)は1つ暗くなる(数字が大きくなる)。
そのため、たとえば以下の画像のシャッター速度と絞りの組み合わせでは、取り込む光の量はすべて同じとなります。
シャッターと絞りにはこのような反比例の相関性があるのです。
※上の文章で「1段」という単語を使いましたが、シャッターと絞りに共通する、露出の1ステップのことを「段」という単位で表します。
シャッター速度と絞りの設定は自動で決めることができる
このように、連動して変化するシャッター速度と絞り。
とくにマニュアル撮影の場合、シャッター速度を変えたら、他の設定も手作業で変える必要があります。
ですが、手動でいろいろな設定をしようとするのには、慣れている人でもとても手間がかかります。
そこで、シャッター速度を設定すると、絞りの値を自動で合わせてくれる機能があります。
それが「シャッター優先AE」という機能です。
(デジタルカメラでは、「Sモード」とも呼ばれています)
シャッター優先AE(Sモード)で撮影しよう!
シャッター優先AE(Sモード)は、シャッター速度を設定すると、ほかの値を自動でカメラが自動的に設定してくれる機能。
上で解説した、動きや時間に関係する表現をしたいときにつかうと便利な機能です。
シャッター優先AEがついたカメラ
シャッター速度を手動で設定すると、ほかの設定を自動で行ってくれるシャッター優先AE。
デジタルカメラでは「Sモード」や「Tv」とも呼ばれており、デジタル一眼レフやミラーレス一眼なら、ほぼすべてのカメラが搭載しています。
フィルムカメラにも、シャッター優先AEを搭載したものは多く存在。
古いものでは、「Canon AE-1」や「Konica C35FD」といった機種が代表例。
1990年代以降のオートフォーカスのフィルム一眼レフなら確実に搭載しています。
シャッター優先AEの使い方
では、シャッター優先AEはどうやって使うのでしょうか。
ミラーレス一眼カメラ、SONY α7を例に説明していきます。
1.シャッター優先AE(Sモードに設定)
操作は簡単。
まず、カメラをシャッター優先AEに設定します。
デジタルカメラでは、モードダイヤルをSやTvに設定。
フィルムカメラでは、機種により異なりますが、絞りリングを「A」や「最小絞り(もっとも大きい数字)」に合わせるものが多いです。
2.シャッター速度を決める
カメラのダイヤルやボタン(機種によって異なる)を操作して、シャッター速度を決めます。
たとえばこちらの画像では、1/500秒に設定しました。
3.絞りが自動的に決まる
すると、適正露出になる絞りの数値が自動的に決まります。
そのままシャッターを切っても大丈夫な状態となりました。
4.他のシャッター速度に変えると?
では、ほかのシャッター速度にするとどうなるのでしょうか?
試しにシャッター速度を1/200秒にしてみました。
すると、自動的に絞りの数字が変化しました。
この例の場合では、F5.0からF8.0に変化し、自動で適正露出となりました。
これだけで露出が適正になっている写真を、使いたいシャッター速度を選んで撮ることができるのです。
シャッター優先AEで撮影してみよう!
上のシャッター速度についての解説でも、動くものを止めて撮る、動いているものを撮って「時間を表現する」といった使い方を解説しました。
シャッター優先AEで、そのような写真を撮るにはどうしたらよいのでしょうか?
シャッター優先AEで動くものを止めて撮る
動いている物を止めて撮るには、シャッター速度を速くします。
速いシャッター速度というのは、おおむね1/500秒よりも速い(短い時間)数値のこと。
より速いシャッター速度として、1/1000秒、1/2000秒、1/4000秒、1/8000秒といった設定があります。
(最速のシャッター速度は、カメラの機種によって異なります)
シャッター優先AEの状態で、このように高速なシャッター速度に設定して、シャッターボタンを押して撮影します。
操作は、これだけでOKです。
これは約100km/hで走っている電車ですが、しっかりと止まって写っています。
こちらも動いているものを、一瞬だけ切り取った表現。
このように、速いシャッター速度で水を撮影すると、水が止まって写ります。
(水しぶきや、水滴が水面に落ちる瞬間の写真も、同様に高速のシャッター速度で撮られています)
動いているもので「時間」を表現
いっぽう、動いているものを意図的に「動いているように」撮ることもできます。
こちらは「スローシャッター」を使った表現です。
上の作例と同じ場所での写真で例を挙げると……
同じ場所の水の流れ。
こちらは、水がさーっと線になって流れているように見えます。
このような写真になるのはシャッターを長い時間(この写真では1/30秒)開いているため。
その間に流れた水の軌跡が線になって写っているのです。
ただし、このような写真を撮る場合、手で持っていると手ぶれしてしまうので、三脚を使ったほうがよいでしょう。
これは上の電車の写真と同じ場所。
シャター速度が遅いので、電車がぶれて写っています。
これも、シャッター速度が比較的遅いため。
ただしこの写真では、1/80秒という、シャッター速度全体から見るとそこまで遅くはないものを選んでいます。
それでも電車がぶれて写っているのは、電車自体の動きが早すぎるためです。
シャッター速度と手ブレ
シャッター速度は、「手ブレ」の防止にも重要です。
手ブレしないシャッター速度
手ブレという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
写真を撮ったら、ブレで写ってしまったことがある人も多いと思います。
では、手ブレとはどのようなものなのでしょうか。
下の写真は、まさに「手ブレ」している写真。
「カメラを持っている手が動いてしまった」ことで、写真がブレで写ってしまっています。
カメラを手で持っているとき。
自分では止まってるように感じていても、人間の身体は、常に微妙に動いています。
心拍や脈拍。
そんな動きがカメラに伝わるため、シャッターを開いている時間が長いと、カメラにその動きが伝わって、手ブレしてしまうのです。
手ブレをしないためのシャッター速度の設定
手ブレをしないためにはシャッター速度の設定が大切です。
カメラのシャッター速度には、「手ブレしない最低限の速さ」というものがあります。
具体的には、「焦点距離分の1秒」というものです。
50mmのレンズでは1/50秒。
ただし1/50秒は、シャッター速度の設定においては、半端な数字なので、1/60秒のシャッターが近似値となります。
同じように、100mmのレンズなら1/125秒。
200mmの望遠レンズなら、1/250秒。
ただし、これはあくまでも「ギリギリ手ブレしない」シャッター速度。
50mmレンズで1/60秒のシャッターだと、実感として微妙にブレて写っていることが多いです。
そこで、たとえば標準レンズなら、余裕を持って1/125秒のシャッターを切るとよいでしょう。
図で表すとこのようになります。
ちなみに、シャッター速度は速ければ速いほど手ブレしにくくなります。
筆者は、特別に絞り値を意識しないなら、さらに余裕を持つために50mmレンズでは1/250秒を切ることが多いです。
このようにシャッター速度を設定することで、手ブレを防ぐことができるというわけです。
手ブレ補正
ところで、最近のデジタルカメラには、「手ブレ補正」の機能が使えるものが少なくありません。
手ブレ補正のついたレンズ(「IMAGE STABILIZER」と表記)
手ブレ補正とは、手などの微妙な動きを打ち消すように、レンズやイメージセンサーが動いて、手ブレをなくす機構。
手ブレ補正を使うと、上記の「焦点距離分の1秒」のシャッター速度よりも遅いシャッター速度でも手ブレせずに写すことができます。
具体的には「2〜3段分」の効果があり、
たとえば1/125秒で手ブレせずに写せるレンズなら、1/15秒の低速シャッターでもブレずに写るのです。
ただし。
最初のうちはあくまでも「焦点距離分の1秒」を前提に考えるのがおすすめ。
最初は「焦点距離分の1秒」で覚えて、徐々に持っているレンズやカメラの手ブレ補正の癖に慣れていくのがおすすめです。
そうすることで、手ブレ補正のないカメラやレンズでも失敗なく撮ることができるようになりますよ。
長時間露光とバルブ撮影
長時間露光とバルブ撮影についても説明します。
長時間露光というのは数秒、何十秒、1分、10分、30分といったように、シャッターを長時間開けっ放しにして撮影することです。
たとえば、夜空の星の写真を撮る。
また、シャッターを開けっ放しにすることで、夜暗いときに昼間のような写真を撮ったりすることや、歩いている人や車が線のように写る写真なども撮ることができます。
長時間露光の注意点
長時間露光には注意が必要な点があります。
まず、デジタルカメラの場合、そのままではノイズが乗るということ。
デジタルカメラのイメージセンサーには、長時間露光でノイズが生じやすいという特性があります。
そのためほとんどのカメラが「ノイズリダクション」機能を内蔵しています。
デジタルカメラで長時間露光する場合は、ノイズリダクションをONにしましょう。
フィルムカメラでも、長時間露光に特有の問題が生じます。
それが、相反則不軌(そうはんそくふき)というもの。
フィルムは露光時間が非常に長くなると、パッケージに記載されている感度よりも、実際の感度が低く写るという特性があるのです。
こちらはとてもマニアックな知識になるので、詳しくはフィルムメーカーの公式サイトにある、特性表を見るのがおすすめです。
ストロボ同調速度(シンクロ速度)
最後に、シャッター速度に関係する項目として、「ストロボ同調速度」(シンクロ速度)について解説します。
詳しくはストロボの記事で解説しているので、併せてご覧ください。
ストロボ同調速度(シンクロ速度)とは
スロボ同調速度とは、ストロボを使用可能な、もっとも速いシャッター速度のこと。
シンクロ速度と呼ばれることも多いです。
フィルムカメラではシャッター速度ダイヤルに「X」の文字で表されていることが多いです。
デジタルカメラにもストロボ同調速度は存在しますが、とくに表示されないものも多くあります。
ストロボ同調速度がある理由
じつはカメラの種類によっては、「ストロボが使えないシャッター速度」というものがあります。
この問題が発生するのは「フォーカルプレーンシャッター」というシャッターを使っている機種。
フォーカルプレーンシャッター
フォーカルプレーンシャッターは、レンズ交換式カメラでもっとも広く使われている方式。
そのため、現代のデジタル一眼レフやミラーレス一眼でも、フィルムの一眼レフカメラやライカのようなレンジファインダーカメラでも共通して同じ問題が発生します。
(※デジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラは、すべてフォーカルプレーンシャッターのカメラです)
フォーカルプレーンシャッターを使ったカメラでは、1/60秒、1/125秒、1/250秒(それぞれ機種によって異なる)といったシャッター速度よりも「低い」(遅い)シャッター速度でしかストロボが使えません。
それよりも速い、1/500秒や1/1000秒のシャッターを切ると、被写体がきちんと写らない(画面が黒くなる)という問題が生じます。
ストロボ撮影で画面の一部が黒くなった写真
これは、フォーカルプレーンシャッターの原理によるもの。
フォーカルプレーンシャッターは、高速なシャッター速度では一度に開かず、スリット状に動くのでこのようになるのです。
ちなみに、すべてのシャッター速度でストロボが同調するカメラもあります。
それが「レンズシャッター」のカメラ。
例えばハッセルブラッドやマミヤRB67、ローライなどの二眼レフ、大判カメラなどが該当します。
レンズシャッターのカメラでは、もっとも速いシャッター速度までストロボが使用可能です。
AE(自動露出)のときは自動で設定されることも
ただし、近年のカメラでは、ストロボを取り付けたり、内蔵ストロボをONにすると、自動的にシャッター速度がストロボ同調速度となるものも多いです。
カメラの機種により動作が異なるので、取扱説明書を確認しましょう。
シャッター速度を操ろう!
今回はシャッター速度について解説しました。
動いてるものを止めて撮るか、動いてるものを動かして撮るか、ということを表現する。
手ブレをさせない。
これがシャッター速度の重要なポイントです。
シャッター速度と並んで、カメラの「露出」に大きく関わってくるものとして、もうひとつ「絞り」があります。
絞りについては、こちらの記事を併せてご覧ください。
シャッター速度と絞りを覚えれば、どんなカメラでも使えるようになりますよ!
1:露出とは
2:シャッター速度とは
3:絞りと被写界深度
4:ISO感度とは
5:カメラの撮影モード P・A・S・M
6:マニュアル露出
7:露出計の種類
8:ピントとボケ
9:画角と焦点距離
10:ホワイトバランスと色温度
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