【撮影基礎講座9】レンズの焦点距離と画角とは? 標準・広角・望遠の違い
今回はレンズの焦点距離と画角について解説します。
カメラのレンズの50mmや28mm、85mmといった数字を聞いたことがあるのではないでしょうか。
また「換算焦点距離50mm」といった言葉も聞いたことがあるかもしれません。
この、○○mmという数字が表すのが「焦点距離」。
レンズの焦点距離によって、撮れる写真は大きく変わってきます。
可能な表現も大きく変わります。
また、「画角」によって、どれくらいの範囲が1枚の写真に写るのかが変わります。
そこで今回は、焦点距離と画角、「標準レンズ」「広角レンズ」「望遠レンズ」それぞれの違いについて見ていこうと思います。
目次
【撮影基礎講座】全体のもくじはこちら
1:露出とは
2:シャッター速度とは
3:絞りと被写界深度
4:ISO感度とは
5:カメラの撮影モード P・A・S・M
6:マニュアル露出
7:露出計の種類
8:ピントとボケ
9:画角と焦点距離
10:ホワイトバランスと色温度
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焦点距離と画角
「標準レンズ」「広角レンズ」「望遠レンズ」といった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
それぞれどのように違うのでしょうか。
違いは、「焦点距離」と「画角」で説明できます。
焦点距離と画角は「写る範囲」を表す
まず最初に、焦点距離と画角で何が変わるかを具体的に見てみましょう。
変化するのは、「写真に写る範囲」です。
広い方から狭い方へ順番に見ていくと……
換算焦点距離28mm 対角画角75度
換算焦点距離35mm 対角画角63度
換算焦点距離50mm 対角画角47度
換算焦点距離85mm 対角画角29度
換算焦点距離105mm 対角画角23度
換算焦点距離135mm 対角画角18度
換算焦点距離200mm 対角画角12度
換算焦点距離300mm 対角画角8度
このように、同じ場所から撮影しても、写る範囲が変化するのです。
では、写る範囲はどうやって決まるのでしょうか?
それに影響するのが「焦点距離」と「画角」なのです。
焦点距離とは?
レンズを見ると、「50mm」「28mm」「85mm」というように、数字が書いてあります。
これが「焦点距離」です。
焦点距離とは、「レンズを通った光が」「どれくらいの距離に焦点を結ぶのか」を表す数値のことです。
焦点距離によって、35mmフィルムカメラやフルサイズのデジタルカメラではレンズの種類を以下のように分類できます。
広角レンズ:28mm以下
準広角レンズ:35mm前後
標準レンズ:50mm前後
中望遠レンズ:85mm前後
望遠レンズ:100mm以上
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
ただし、これはあくまでも35mmフィルムカメラやフルサイズのデジタル一眼レフカメラの場合。
「フィルムの大きさ」や「イメージセンサの大きさ」の違うカメラでは同じ「標準レンズ」「広角レンズ」「望遠レンズ」でも、焦点距離が異なってくるのです。
画角とは?
画角とは、カメラの位置から見て「どれくらいの角度の範囲」が写真に写るのかということです。
一般に35ミリフィルムカメラやフルサイズのデジタルカメラの場合、以下のようになります。
28mm広角レンズ:75度
35mm準広角レンズ:63度
50mm標準レンズ:47度
85mm中望遠レンズ:29度
100mm望遠レンズ:24度
28mmよりも焦点距離が短い場合はさらに画角が広く、
100mmよりも焦点距離が長い場合には、さらに画角が狭くなります。
画角と換算焦点距離の関係
焦点距離と画角。
この2つが関連して、写る範囲が変化するのはわかりました。
でも、具体的にはどうやって決まるのでしょうか?
そこで登場するのが「換算焦点距離」という概念です。
換算焦点距離とは、
「フィルムやイメージセンサーのサイズが異なるカメラにレンズを取り付けたとき」に
「35mmフルサイズのカメラでは、どれくらいの焦点距離のレンズの画角と同じになるのか」を表す
というもの。
例としては、50mm標準レンズの画角(47度)は、それぞれ以下のようなレンズに相当します。
35mmフルサイズ:50mm
APS-Cサイズ:約35mm
マイクロフォーサーズ:約25mm
中判カメラ:約75〜105mm(フィルムサイズにより異なる)
「APS-Cサイズ」や「マイクロフォーサーズ」のデジタルカメラなど、35mmフルサイズよりイメージセンサーが小さいカメラ、
フィルムの大きさが35mmフルサイズより大きな「中判カメラ」などで使われる概念です。
これは、1950年代から2000年代前半まで、35mmフィルムカメラ(フルサイズ)がもっとも普及したカメラだったことに由来しています。
もっとも多く使われたカメラのレンズの焦点距離に例えることで、具体的にどれくらいの範囲が写るのかを、わかりやすく説明しているのです。
つまり、あくまで便宜上の概念でしかありません。
「画角○○度」で表すよりもわかりやすいので、こうしているというだけなのです。
フィルム・イメージセンサーの大きさで画角が変わる理由
同じ焦点距離のレンズをつけた場合でも「レンズを通った光が写真として写る範囲」、つまり画角はイメージセンサやフィルムの大きさによって変化します。
たとえばAPS-Cサイズやマイクロフォーサーズといった小さなイメージセンサーのカメラでは、以下の画像のように35ミリフィルムカメラよりも狭い範囲しか写らないのです。
そのため、同じレンズを取り付けたときでもより狭い範囲を切り取ることになり、35mmフルサイズよりも望遠レンズのような写り方(画角が狭い)となります。
同様に中判カメラのような35ミリよりも画面のサイズが大きいカメラでは、同じ焦点距離のレンズでも広角レンズとなります。
ただし、小さいイメージセンサーのカメラに、それより大きなイメージセンサーのカメラ用のレンズを取り付けることはできますが、逆は例ません。
たとえばAPS-Cサイズ用のレンズをフルサイズのカメラをつけると写真の周辺部が黒く写ってしまいます。
APS-Cサイズ用のレンズをフルサイズセンサーのカメラに取り付けたとき。画面の隅が黒くなっている。
これは「ケラレ」と呼ばれる現象。
レンズには「イメージサークル」というものがあり、光が像を結ぶ範囲は限られています。
レンズを通った光が写真として像を結ぶ範囲よりフィルムやイメージセンサーの大きさのほうが大きく、はみ出してしまっていると、範囲外は真っ黒になってしまうのです。
参考:イメージセンサーやフィルムの大きさの種類
イメージセンサーやフィルムのうち、主な規格にはこのようなサイズ差があります。
上でも書きましたが、「換算焦点距離」の基準となるのは、フィルム時代にもっとも普及していた「35mmフルサイズ」です。
35mmフルサイズと主なイメージセンサーやフィルムを比較すると、これくらいのサイズ差があります。
デジタルカメラのセンサーサイズ
中判カメラのフィルムサイズ
(参考:さらに大きな大判 4×5サイズとの比較)
広角レンズと望遠レンズの特徴
ここまで、画角について解説してきました。
では、焦点距離が変わると、他にどんなことが変化するのでしょうか?
広角レンズ(焦点距離が短い)と望遠レンズ(焦点距離が長い)には、それぞれ以下のような特徴があります。
広角レンズは、画角が広くなる、つまり焦点距離の数字が小さくなればなるほど。
望遠レンズでは、画角が狭くなる、つまり焦点距離の数字が大きくなればなるほどその特徴が強まります。
広角レンズの特徴
28mmの広角レンズ
35ミリフルサイズ換算で28mmや24mmやさらに短い焦点距離の広角レンズ。
以下のような特徴があります。
遠近感が強調される
広角レンズでは、画面の中にある被写体の遠近感が強調されます。
これは手前から遠くまでがひとつの画面の中に写るため。
この特徴により、風景を撮るとき、よりダイナミックな景色が撮影できます。
被写界深度が深くなる
また広角レンズは被写界深度が深いのも特徴です。
すなわち、手前から奥まで広い範囲にピントが合うということです。
手前から奥までピントが合っている
これにより、広角レンズは画面全体にピントが合った、「パンフォーカス」の写真を撮ることが簡単にできます。
逆いえば、背景がボケた写真を撮るのには向いていません。
被写界深度についてはこちらの記事で解説しています。
望遠レンズの特徴
望遠レンズには広角レンズと正反対の特徴があります。
遠近感が圧縮される
望遠レンズでは遠近感が圧縮される「圧縮効果」が生じます。
遠くにあるものと近くにあるものが、あたかも隣接しているように写るのです。
圧縮効果は、レンズの焦点距離ではなく、画角に応じて発生します。
そのため、広角レンズで撮影した写真の中央部だけを切り出しても、同じように遠近感が圧縮された見た目になります。
被写界深度が浅くなる
望遠レンズでは広角レンズとは反対に、被写界深度がとても浅くなります。
つまりピントが合う範囲が狭くなるということです。
手前にだけピントが合っている
これを活かすことで、望遠レンズでは背景をボカした写真が簡単に撮れます。
そのかわり、ピンボケの可能性も高まるので注意しましょう。
遠近感とボケを比較
例に挙げた画像を、広角レンズの場合と望遠レンズの場合を並べてもう一度見てみましょう。
同じものを撮っていても、こんなに違いがあることがわかります。
遠近感(圧縮効果)
28mm広角レンズの場合
200mm望遠レンズの場合
被写界深度(ピントの合う範囲)
28mm広角レンズの場合
200mm望遠レンズの場合
焦点距離と手ブレのしやすさ
望遠レンズで手ブレした写真
広角レンズと望遠レンズでは、手ブレのしやすさも変わります。
基本的には広角レンズは手ブレしにくく、望遠レンズは手ブレしやすくなります。
これは、カメラが少し動いたときに、望遠レンズの方が「見かけの上で」より多くの距離、被写体がファインダーの中で動いてしまうため。
手ブレを防ぐため、広角レンズよりも望遠レンズのときのほうが、より早いシャッター速度を切る必要が出てきます。
具体的には「焦点距離分の1秒」よりも速いシャッター速度を切るのがおすすめ。
たとえば300ミリの望遠レンズの場合には、500分の1秒よりも早いシャッター速度を切るとよいでしょう。
シャッター速度と手ぶれについてはこちらの記事で解説しています。
焦点距離と画角を操って写真の表現を広げよう
このように、焦点距離と画角によって撮れる写真が大きく変わってきます。
パンフォーカスの写真と背景がボケた写真。
そして望遠レンズならではの圧縮効果と、広角レンズならではの遠近感。
レンズを使い分けて、より幅広い写真を生み出してみませんか?
レンズの焦点距離についてはこちらの記事でも解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
1:露出とは
2:シャッター速度とは
3:絞りと被写界深度
4:ISO感度とは
5:カメラの撮影モード P・A・S・M
6:マニュアル露出
7:露出計の種類
8:ピントとボケ
9:画角と焦点距離
10:ホワイトバランスと色温度
2023年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
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