[オールドレンズ探訪記] Jupiter-8 5cm F2(ジュピター)1955年製の実力とは!?(作例・撮影Tipsあり)
こんにちは、雨樹一期(あまきいちご)です。前回に引き続き、作例をご紹介するオールドレンズは旧ソ連で作られたレンズのジュピターです。
今回はJupiter-8 5cm F2(ジュピター8)なので、50mmの標準レンズになります。
これも使ってみたかったオールドレンズです。使い勝手は今回の5cm(50mm)が良いですね。
前回のMC Jupiter-9 85mm F2(ジュピター9)と同じ場所で撮影したので、ぜひ比べながら見て頂けたらと思います。
【前回の記事はこちら】
[オールドレンズ探訪記] MC Jupiter-9 85mm F2(ジュピター)は好みが分かれそうな癖の強さのあるレンズ (作例・撮影Tipsあり)
目次
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)について
まずは、今回作例を撮影したレンズ、Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)について簡単に紹介します。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)はMC JUPITER-9(ジュピター) 85mm F2と同じく、Cael Zeiss(カール・ツァイス)のSonnar(ゾナー)のコピー品。
でも、今回のJupiter-8 5cm F2は、同じジュピターなのに前回の作例のJupiter-9とマウントが違います。
>Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)はライカLマウントのアダプターになります。
関西人じゃなくても「違うんかーい!」って突っ込みますよ。しかも、ライカLマウントには呼び名がいろいろあるんです。
・Lマウント
・ライカマウント
・L39マウント
・ライカL39マウント
・M39マウント
んーー、ややこしい!
僕はレンズの歴史など疎いですが、今オールドレンズをやっている方や興味のある方って、みなさん若いですからね。このレンズはどのカメラに使われていたのか?って、知らない方が多いです。
だからマウントには戸惑うと思いますが、一緒に少しずつ深めていきましょう。
(レンズマウントについては、この記事の後半、レンズについての解説部分で詳しく触れます)
上の写真の通り、マウントアダプターはK&F ConceptのL39マウント – SONY Eマウントのものを使用しました。
今回のJupiter-8は初期型
さて。今回使用したのは初期型でピントリングに指掛けが付いています。
50mmなので、やっぱり撮影しやすいですね。作例にいく前に言っちゃいますが、はじめの一本としてこれも候補に入れてもいいと思います。
ちなみに、ジュピターはロシア語ではユピテルだって。「可愛いやないかーい!」
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)で撮影した作例
それでは、Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)で撮影した作例を見ていきましょう。
今回の撮影もボディは、手頃な中古価格でオールドレンズ入門に最適なミラーレス一眼カメラ、SONY α7を使用しています。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)のボケ味
とりあえず開放で一枚。MC JUPITER-9(ジュピター) 85mm F2の作例に比べると、ピントの甘さや滲みはそこまで感じませんね。まー、それでもカリカリッとはしてないかな。
MC JUPITER-9(ジュピター) 85mm F2よりも、ボケはやや硬くなります。85mmと比べちゃダメですけどね。
絞り開放はF1.4ではなくF2になりますが、充分ボケてくれます。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)の撮影Tips「光と共にあれ!」
さて。撮影開始時は曇っていたのですが、「なんかピンとこないレンズ」だと思っていました。
作例に、レビューはどうしたものかなと。
だけど数枚撮って、太陽が出てきた瞬間に、レンズのポテンシャルが一気に見えてきたんです!
太陽が出ると一気に心地よい描写
さっきの数分後の写真ですよ。RAW現像もしてない、ノーレタッチのjpg撮って出し。
いやいや、絶妙な柔らかさやん、と。
以前、「ヘリオスは撮って出しでもいい!」みたいに言いましたが、こっちのが好きかも。
太陽が出る前は100点満点で45点だったのに、一気に85点になりました。
Jupiter-8 5cm F2でゴーストを出してみる
続いてゴーストがどれだけ出るかを探ってみました。
逆光でも太陽をしっかり隠すと出ませんね。
これは太陽が向かって右上にある状態。絞りは開放で撮影した作例です。
これはしっかり出ましたが、光の入れ具合でゴーストが汚くなっちゃいますね。ゴーストに囲まれた部分というのかな。黒い筋が気になります。
んー、しっかり虹色の輪っかは出るんだけど、ゴーストだけで考えるとキレイではないかも。
個体差などあるかもしれませんが。
少し絞ってF8などで撮ると、絞りレンズの形がクッキリでますね。
ゴーストが出るか出ないかのギリギリのラインを攻めてみよう
ただ、ゴーストが出ないギリギリラインはめっちゃキレイです。
ファインダーを確認しながらコントロールしましょう。
逆光だとよりふわっと、白っぽくなりますね。玉ボケの丸みもいいなぁ。
「MC JUPITER-9 85mm F2」と同じく、写真の端まで丸さを保ってくれます。
Jupiter-8 5cm F2の周辺減光
写真を見ての通り、凧揚げをしてます。
ここで見て頂きたいのは周辺光量落ち。写真の四隅が暗くなっているのが分かります。
順光だと魅力は半減するかもしれませんが、発色はなかなか良いですね。
50mmのレンズにしては周辺光量落ちが出ていますが、オールドレンズを楽しみたいならこれはむしろプラス要因かと。
ピント面の解像感は良好
いずれも開放で撮影した作例です。
うん。MC JUPITER-9(ジュピター) 85mm F2ほど、ピントは甘くないですね。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)で撮影してみた感想
50mmなので、やっぱり単純に撮影しやすいです。標準域のオールドレンズは割と安価で手に入りますが、最初の一台としての候補に入れてもいいと思います。
理由としては、開放から割としっかり撮れる、発色も良くて、コントラストも程良い。
そして、自然の光がある時の抜群の破壊力。周辺光量落ちも味です。
残念な部分はゴーストが汚くなることと、最短撮影距離で1mなので、被写体に寄って撮ることが出来ないこと。
クローズアップフィルターを使えばいいのですが、そこはやっぱりレンズの性能でもっと寄りたかったかな。
ほんとにね、陽が注いでるなー、ぽわわわーーんって写真になるんです。
撮っていて「うわー」って言っちゃうんです。
MC JUPITER-9(ジュピター) 85mm F2はごまかしが効かないオールドレンズだったけど、Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)は誰でも雰囲気を出せそうです(笑)。
おまけ「おすすめの標準レンズ」
さて、オールドレンズで焦点距離が50mm付近の候補ってたくさんあります。これまでの作例で僕が試した中では、
鮮やかで描写力と立体感があり、とろみのあるボケがたまらないのは上記の写真、「Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4」
安価でレトロ描写と虹色のゴーストを楽しみたいのなら上記の写真、「PENTAX Super takumar 55mm f1.8」
グルグルボケと癖のある描写が好きなら上記の写真、「HELIOS-44-2 58mm F2」
解像度よりも、低い明瞭度で滲みのある緩い描写を求めるなら上記の写真、「OLYMPUS G.ZUIKO AUTO-S 50mmF1.4」
安価な割に描写のバランスが良く、失敗したくないのなら上記の写真、「Canon NEW FD 50mm F1.4」
柔らかく温かみのある写真が撮りたいなら、今回ご紹介した上記の写真、Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)がオススメですね。
いやぁ、これは欲しいな。
価格もオールドレンズのなかでも安いですものね。
2024年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ。一度は手にしたい逸品!
FM2発売当時のマニュアルレンズにインスパイアされたデザイン!
どこでも持ち歩ける相棒です。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)簡単な解説
ここからは、中古フィルムカメラとオールドレンズのサンライズカメラ スタッフが、雨樹さんに代わってJupiter-8 5cm F2(ジュピター8)について簡単に紹介します。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)
マウント | L39マウント 旧コンタックス・キエフ用マウント他 |
構成 | 3群6枚 |
メーカー | 旧ソ連製 |
中古価格 | 1万円台~ |
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8、ユピテル8、Юпи́тер-8)は旧ソ連で製造が開始したオールドレンズ。
戦前にCarl Zeissが開発したレンズ、Sonnar 5cm F2をもとに、旧ソ連で製造が続けられたレンズです。
これは、第二次世界大戦でドイツが敗戦したのち、旧ソ連はツァイスの技術者を設備ごと連行し、自国内で製造を行うようになったことに由来しています。
そのような歴史があるため、構成は3群6枚と、ベルテレ博士がエルノスターを元に生んだSonnar 5cm F2の構成を基本的には受け継いでいます。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)のレンズマウント
このシリーズの前回の記事で紹介したJupiter-9 85mm F2には多くのレンズマウントがありましたが、Jupiter-8 5cm F2で一般的な写真撮影に使用できるのは、主に以下の2種類です。
- L39マウント(ライカスクリューマウント、いわゆるLマウント)
- Kiev用マウント(レンジファインダーコンタックスマウント互換)
じつは、旧ソ連で最初に作られたのはKiev用マウント=レンジファインダーコンタックスのマウントのもの。
そのものずばり、旧ソ連領内のキエフで製造された「キエフ」というレンジファインダーカメラのためのレンズでした。
レンジファインダーカメラのキエフは、ツァイス・イコンのContax(コンタックス)がもととなったカメラ。
というよりも、初期のキエフは製造設備を含めContaxそのものであったことが知られています。
↑Kiev 4M
そのため、キエフ用の標準レンズとしてSonnar 5cm F2がもととなったJupiter-8 5cm F2が作られることとなったのです。
↑Kiev用のJupiter-8(Jupiter-8M)
そしてのちに、L39マウント(ライカスクリューマウント)用のJupiter-8 5cm F2も作られるようになります。
レンジファインダーカメラ用レンズなので一眼レフ用はない
前回の記事で作例を紹介したJupiter-9 85mm F2と異なりM42マウント版などの一眼レフ用が存在しないのは、このレンズがレンジファインダーカメラ用のレンズであるためです。
Sonnar(ゾナー)というレンズタイプは、バックフォーカス(レンズの後玉の後部からフィルム面の距離)が短くなるという特徴があります。
これはレンジファインダーカメラでは問題にならないのですが、一眼レフカメラではレンズとフィルム面の間にレフレックスミラーが入るため、5cm(50mm)の焦点距離ではゾナータイプを用いることはできなかったのです。
いっぽう、前回のJupiter-9では焦点距離が85mmと長いので、その分バックフォーカスも長くなり、同じレンズ構成のまま、M42マウントをはじめとする一眼レフ用にも供給することができたのでした。
余談:L39マウントの名称について
本記事の冒頭で、レンズマウントの名前がLマウント、ライカマウント、L39マウント、ライカL39マウント、M39マウントなどいろいろあってわかりにくいという記述がありました。
これらのレンズマウントが指し示しているのは、基本的には同じマウントのことです。
じつは2010年代後半までのしばらくの間は、このマウントのことはとりあえず「Lマウント」と呼んでおけば間違いありませんでした。
ところが。
2018年、ライカ・パナソニック・シグマによるLマウントアライアンスにより、(それまでも存在したマウントが)Lマウントと名付けられてしまいました。
これにより、Lマウントという単語がなにを指し示すか非常にわかりにくくなるという事態に……。
この部分を執筆しているサンライズカメラ スタッフは、基本的にはL39マウント、場合によってライカスクリューマウントを併記するようにしています。
(当サイトの記事でLマウントアライアンスが発足する以前に書かれたものは、Lマウントという表記が残っていることがあります)
もう一点付け加えると、L39マウント(ライカスクリューマウント)をM39マウントと呼ぶのは少々誤解を生む可能性があるので避けたほうがよいかもしれません。
というのは、レンズマウント自体の寸法がL39マウントと同一で、フランジバック(マウント表面からフィルム面の距離)が異なるマウントが存在するためです。
Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)を中古で買うなら
さて、Jupiter-8 5cm F2(ジュピター8)を中古で買う場合、注意したいのはやはりレンズマウントです。
マウントアダプターでミラーレス一眼カメラに取り付けて使用する場合、使いやすいのはやはりL39(ライカスクリューマウント版)のほうでしょう。
その分中古価格はこちらのほうが多少高めです。
それでもオールドレンズ全体の中では低めの価格で、1万円台も出せば光学系の状態がとてもよいものが手に入るでしょう。
前回のJupiter-9はどうしても価格が2万円を超えてきてしまうので、少しのお小遣いでレンズがほしいというときの選択肢にぴったり。
L39用Jupiter-8 ざっくりとした年代別分類
非常にざっくりと、おおまかに分類するとL39用Jupiter-8は古い順に以下の3種類に分けられます。
(本当はもっと詳しく分類可能ですが……)
■銀鏡筒、指掛けあり(今回使用したもの):1960年代前半まで
↑1955年のJupiter-8:画像右側に、ピントを合わせるための指掛け(突起)がある
■銀鏡筒、指掛けなし:1960年代前半~
↑1964製のJupiter-8:指掛けの突起がない
■黒鏡筒:比較的新しいもの
↑比較的新しいJupiter-8は黒い鏡筒になる
旧ソ連のレンズは古いほどよいとは言われますが、スタッフの私が持っている私物の黒鏡筒、かなり新しいJupiter-8もけっして写りは悪くない印象です。
ちなみに旧ソ連時代のレンズはシリアルナンバーの頭2桁が製造年を表すといわれています(例外あり)。
今回の作例で撮影に使用したJupiter-8は55から始まるので1955年製。
↑再掲:シリアルナンバーの上二桁が55なので1955年製
じつは1955年製造かつL39マウントのJupiter-8というのは非常に! 貴重です。
1958年や1959年くらいになると結構見かけるのですが、1955年や1956年製ともなると中古価格は少し高くなってきます。
Kiev用は捨て値ですが……
いっぽう、Kiev用(旧コンタックスマウント)は、中古では非常によくみかけるうえ、価格ははっきりいって捨て値です。
これには理由があります。
まず、旧コンタックスマウントをミラーレス一眼カメラで使うためのマウントアダプターはどうしても構造が複雑になること。
そして、フィルムカメラで撮影する場合でも、中古のKievは未整備のままでは使えないことが多いことです。
旧ソ連製のカメラは使い物にならないという言葉も散見されますが、Kievは整備さえ行えば必ずしも使えないカメラではありません。
しかし、そもそも旧コンタックスのボディの中古価格は例えばLeica(ライカ)に比べるとずっと安いこともあり、修理・オーバーホールして商品として中古で売られることが少ないのです。
Jupiter-8と旧コンタックス 関連記事
Contax (コンタックス)I・II・III/旧コンタックス Contaxレンジファインダーカメラ徹底解説 Contax I・II・IIIとは?
今回使用したミラーレス一眼カメラについて
今回もボディはSONYの初代α7です。
Jupiter-8のような比較的小型のオールドレンズとの取り合わせがとても似合うボディですね。
オールドレンズを使うためのEマウントボディとしては――
中古で廉価なフルサイズのミラーレス機が欲しい方にはSONY α7が。Jupiter-8 5cm F2 まとめ
今回は旧ソ連製レンズのJupiter-8 5cm F2について見てきました。
中古価格も本当にお手頃で、オールドレンズをこれから始めたいという方にうってつけですね!
5cm(50mm)という焦点距離も標準レンズなのでとても使いやすいです。
あなたもJupiter-8 5cm F2で、オールドレンズならではの「ゾナータイプ」の写りを楽しんでみませんか?
次回の記事はこちら
次回はいくた りかさんの執筆で、NikonのAi-sレンズ、Nikon Ai NIKKOR 28mm F2.8Sの作例と解説をお届けします。
ニッコールレンズの定番で、手に入れやすい中古価格。
広角オールドレンズ入門にも最適なレンズの味、ぜひご覧ください。
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