TOYO FIELD(トヨフィールド)/大判カメラの「鉄板」実用機
今回は大判カメラのトヨフィールド(TOYO FIELD)について紹介します。
トヨフィールドは、日本のカメラメーカー、サカイマシンツール(旧・酒井特殊カメラ製作所)が製作・販売している大判フィールドカメラ。
大判カメラにはモノレールタイプの主にスタジオ撮影を主眼とした機種と、小さく折りたたむことができ、外に持ち出して撮影ができるフィールドカメラがありますが、トヨフィールドは名前からもわかるとおり後者のタイプ。
トヨフィールドは中古の値段もこなれていて、大判フィールドカメラのなかでも「鉄板」の選択肢といえるでしょう。
写真で作品を制作する作家が選ぶ大判カメラも、ほとんどの場合トヨフィールドの各機種。
もちろん、より高級なカメラとしてリンホフもありますが、各部の仕上げや質感が良好であるかわりに、中古の値段も高くなってしまいます。
日本製のトヨフィールドは、まさに実用のための大判カメラ。
文句なしに、大判で撮るときにおすすめできる選択肢です。
では具体的に、どんなカメラなのか見ていきましょう。
目次
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トヨフィールド(TOYO FIELD)
国産大判カメラの代表機種、トヨフィールド(TOYO FIELD)。
大判としては中古も豊富で、値段もこなれています。
いったいどんなカメラなのでしょうか?
トヨフィールド(TOYO FIELD)とは
トヨフィールド(TOYO FIELD)とは、有限会社サカイマシンツール(旧・酒井特殊カメラ製作所)が製造している大判フィールドカメラ。
日本製の大判カメラの代表格とでもいうべき存在です。
大判カメラとは
大判カメラとは、35mmフィルム(パトローネ――缶――に入った普通のフィルム)や120フィルム(二眼レフなどの中判カメラで使うフィルム)よりも画面が大面積のフィルムを使うカメラのこと。
フィルムが巻かれておらず、1回撮るごとに1枚ずつ入れ替えるシート状のフィルム(シートフィルム)になっています。
大判フィルムの実物は、以下のようなものです。
フィルム自体の面積が大きいので、その分画質がよく、デジタルカメラに換算すると1億画素相当以上の美麗な写真を撮ることが可能です。
大判シートフィルムのサイズを比較
大判カメラについては、以下の記事で解説しています。
フィールドカメラとは
フィールドカメラとは、
・小さく折りたたむことができる
大判カメラのこと。
大判カメラには、フィールドカメラのほかに、スタジオでの商品撮影に多用されたモノレールカメラというものもあり、トヨフィールドの製造元 サカイマシンツールは「トヨビュー」を製造していました。
トヨビューもまた、トヨフィールド同様日本製大判カメラの代表格です。
トヨフィールドの特徴
それでは、トヨフィールドにはどんな特徴があるのでしょうか?
簡便に使える屋外撮影に最適な大判カメラ
大判カメラは、撮影にとても手間がかかるフィルムカメラです。
それだけに、撮影の準備が簡単であることはとても重要。
その点、簡便な構造かつ、ダイヤルやノブなどの操作部への指掛かりがよく扱いやすいトヨフィールドは、撮影したい場所に着いてすぐに準備を終えることができるでしょう。
もちろん大判カメラはすべての操作が手動。
シャッターを開放してピントグラスで焦点を合わせ、シャッターを閉じ、カットフィルムホルダーを入れる。
引き蓋を抜いてシャッターを切る。
引き蓋を入れる。
もちろん露出は単体露出計で決める必要があります。
撮影する際には細心の注意が必要な大判カメラですが、それだけに、カメラ本体の操作がわかりやすくまごつくことがないのは、ミスの防止につながります。
トヨフィールドが大判カメラで作品を作る写真家に愛用されるのは、このような点にも理由があるのでしょう。
アオリについては最低限
大判カメラならではの機能、アオリについては、トヨフィールドは最低限にとどめています。
アオリとは、レンズやフィルムの面を移動させることで、「建築物を見上げて撮影するときに遠近感を補正し縦の線を垂直にする」「広い範囲にピントを合わせる」などを行うこと。
かつてPhotoshopで補正ができなかった時代は、プロカメラマンにとって必須の技術でした。
ただし、可動部や可動範囲が増えると、カメラ本体は重くなります。
金属製の大判カメラはただでさえ木製カメラより重いもの。
そこでトヨフィールドはアオリの範囲を少なめにすることで、取り扱いや持ち運びを便利にしているのです。
実際問題として、トヨフィールドが得意とする屋外での撮影は、アオリの量はそこまで必要としないもの。
むしろ簡便な取り扱いで、風景を超高画質で切り取ることに特化しているといえるのではないでしょうか。
トヨフィールドのアオリ量
フロント
ライズ | 20mm |
フォール | 23mm(AII Lは28mm) |
シフト | 7mm |
スイング | 8° |
ティルト | 90° + 15° |
バック
スイング | 8° |
ティルト | 90° + 15° |
※トヨフィールド45AIIのもの。
※この項参考文献 「サカイマシンツール フィールドカメラ製品情報」 2018年9月17日閲覧
信頼できる金属製ボディ
大判フィールドカメラには金属製と木製のものがあります。
トヨフィールドは全金属製。
それだけに剛性が高く、堅牢性・信頼性も抜群です。
もちろん、ナガオカやエボニーのような工芸品的な高級感はありません。
しかし、質実剛健な機能美こそが、トヨフィールドならではの魅力をかもし出しているといえるともいえるのではないでしょうか。
前述した金属製という点と合わせ、信頼性と軽量さのバランスをうまく取っているといえるでしょう。
リンホフよりずっと安価
金属製の大判フィールドカメラといえば、リンホフスーパーテヒニカやマスターテヒニカが有名。
リンホフは大判カメラの頂点ともいえる、高級機種です。
リンホフに対するトヨフィールドの利点。
それが、中古価格がずっと安価ということ。
中古でも10万円を超えるものが多いリンホフに対して、トヨフィールドは実用品が5万円程度で入手可能。
もちろん質感や仕上げはリンホフのほうがずっと上ですが、撮影を主眼とした場合、この価格差は効いてきます。
けっして安くない大判シートフィルム。
リンホフとの価格差でフィルムを買うのも賢い選択といえるでしょう。
リンホフについてはこちら
グラフレックス規格のバックで多用途に対応
トヨフィールドのフィルムバック(カメラ後部)は、大判カメラのデファクトスタンダードであるグラフレックス規格。
そのため、大判のシートフィルムだけでなく、同じくグラフレックス規格のホースマンやマミヤRBなどのロールフィルムバックが使用可能です。
基本的には大判カメラとしてこれ以上なくオーソドックス、かつ互換性に勝っているのも、トヨフィールドが国産大判カメラの代表格となった理由といえるかもしれません。
※ただしレンズボードは独自規格。ですが純正でデファクトスタンダードのリンホフ規格への変換ボードがあります。リンホフ規格に最初から対応したモデルもあります。
トヨフィールドの各機種解説
トヨフィールドは日本製大判カメラの代表。
ここでは情報の少ない初期の機種以外を解説します。
4×5インチ(シノゴ)の機種
トヨフィールド45A
2018年現在、中古でトヨフィールドを購入するなら、ほとんどの場合この機種になるでしょう。
筆者が以前使ったことがあるのもこのモデル。
1974年発売のロングセラーで、中古市場にも非常に豊富。
機能としては奇をてらったところはなく、良い意味で至って標準的な大判カメラです。
フィルムバックは、縦横の切り替えは一旦取り外して向きを変える形式となっています。
トヨフィールド45AII・AIIL
トヨフィールドAII(A2)は、トヨフィールド45Aの改良版。
操作ノブがゴム巻きとなり、操作性が向上しています。
標準で、フィルムバックが縦横に回転するレボルビングバックになっています。
AIIはトヨボード、AIILはリンホフボード対応です。
現行品。
トヨフィールド45CF・45CFL
トヨフィールド45CFと45CFLは、ボディをポリカーボネートとカーボンファイバーにした、樹脂製の機種。
これにより、トヨフィールド45AIIの約2.8kgから、約1.6kgまで軽量化を実現しました。
トヨボードのCFとリンホフボードのCFLがあります。
トヨフィールド45AX
トヨフィールド45AXは、基本的には45AIIと同じで、バックの縦横切替が45Aと同様のグラフロックを一旦外して付け替える形式となっている機種。
実用的には大きな差はないといえます。
8×10インチ(エイトバイテン・バイテン)の機種
4×5インチ(シノゴ)のさらに4倍の画面サイズをもつ、エイトバイテンのトヨフィールドです。
トヨフィールド810MII
トヨフィールド810Mの改良版。
全長を前機種よりも更に伸ばすことが可能となり、より焦点距離が長いレンズが標準で使えるようになりました。
8×10インチ(エイトバイテン)について
エイトバイテンは、一般的に購入可能なフィルムの中でもっとも大きなフィルムです。
35mmフィルムと比較すると、これほどの画面サイズの違いがあります。
※海外通販ではさらに大きなサイズのシートフィルムの購入も可能です。
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トヨフィールド 中古購入時の注意点
トヨフィールドを中古で購入する場合の気をつけたいことについて解説します。
1.蛇腹の劣化
これは大判カメラをはじめ、蛇腹を用いたカメラを中古で購入するときに共通する点ですが、蛇腹の劣化に気をつけましょう。
蛇腹が劣化していると、角部分に小さな穴(ピンホール)が生じ、カメラ内部に光が侵入してしまいます。
チェックポイントとしては、最低限、光が漏れていないか光にかざして確認すること。
蛇腹の表面が劣化して角部分がはがれているようなものは避けたほうがよいでしょう。
また、蛇腹には型崩れも生じます。
カメラをたたむときに蛇腹がうまく折りたたまれない。
カメラを広げたときに、蛇腹が下に垂れ下がってしまう。
そのような中古は、蛇腹の交換が必要になる可能性が高いので避けたほうがよいでしょう。
2.リンホフボード用のアダプターの有無
リンホフボードのついたレンズ
現在、大判カメラ用のレンズを取り付ける規格は、ほぼ「リンホフ規格」に統一されています。
これは、リンホフに端を発するレンズボードの規格のこと。
トヨフィールドはもともとはトヨ規格(トヨボード)を使用するように作られているのですが、リンホフ規格に変換するアダプターが純正で存在しており、それを取り付けることでリンホフボードの使用が可能です。
(※ただし、トヨフィールド45AⅡLなど機種名にLのつく機種は変換ボードなしでリンホフボードが使用可能です)
変換アダプター
中古での購入自体は容易ですが、数千円〜1万円程度はしてしまうので、できれば付属しているものを選ぶのがよいでしょう。
大判カメラのおすすめ用品
トヨフィールドをはじめとする大判カメラでの撮影を楽しむなら、こちらの用品がおすすめです。
露出計
大判カメラの撮影に欠かせない露出計。
セコニックの入射光式のものがよいでしょう。
ルーペ
ピントグラスの確認に欠かせないルーペ。
日本のPEAKのものは定評があります。
ケーブルレリーズ
大判カメラのシャッターを切るのにケーブルレリーズも欠かせません。
大判のシートフィルム
フィルムの値段や入手性は年々変化していますが、モノクロについては各国で製造されており比較的見通しは明るいかと思います。
以下は中国の「上海」ブランドのシートフィルム。
一度試してみるのはいかがでしょうか。
大判カメラ 関連記事
大判カメラについては、以下の記事でおすすめ機種を他にも解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
大判で撮るならまず間違いのない選択肢
かずある大判カメラのなかでも、初めて購入するならトヨフィールドの中古を選んでおけば間違いはありません。
蛇腹の状態さえよければ買い。
もちろん蛇腹は消耗品ですが、交換を前提に設計されているので、壊れるところが基本的にないトヨフィールドは半永久的に使い続けることができますよ。
フィルムで写真を撮るという行為の極北。
単に解像度が高いというだけではない、デジタルでは絶対に真似ができない写真を生み出すなら、大判カメラしかありません。
ぜひ中古のトヨフィールドで、大判をはじめてみませんか?
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