M42マウントアダプターの選び方と注意点 豊富なオールドレンズの使い方とは?
いま、ミラーレス一眼に取り付けて使う人が増えているオールドレンズ。
なかでもとくに種類が多く、人気が高いのがM42マウント(M42スクリューマウント)のマウントアダプターです。
主に1950〜1970年代にかけて、フィルム一眼レフカメラ用のかずかずの名レンズ・珍レンズが製造されたM42マウント。
構造が簡単なため、マウントアダプターも安価です。
ただし、M42マウントのオールドレンズは、種類によって構造に微妙な違いがあるため、使用に制限があったり、取り付けができないことも。
そこで今回は、M42マウントアダプターを選ぶときの注意点について解説します。
オールドレンズ入門にも最適なM42マウント。
ぜひ、これからオールドレンズを始めたいという初心者の方も参考にしてくださいね。
目次
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M42マウントのオールドレンズ
M42マウントのオールドレンズなら、こんな写真が撮れますよ!
PENTAX Super Takumar 55mm F1.8で撮影
撮影:雨樹一期
Super Takumarの作例はこちら
[オールドレンズ撮り比べ4]PENTAX Super Takumar 55mm F1.8はTHE 入門レンズ。でも実は写りは絶品!
Helios-44 58mm F2(旧ソ連製レンズ)で撮影
撮影:雨樹一期
Helios-44の作例はこちら
【オールドレンズ探訪記】Helios-44-2 58mm F2はオールドレンズらしさを堪能できるレンズ(作例・撮影Tipsあり)
使用したボディとマウントアダプター
上の作例では、ミラーレス一眼カメラはSONYのα7初代を、マウントアダプターはKIPON製のものを使用しています。
M42マウントとマウントアダプター
フィルムカメラの時代、日本・ドイツ・ロシアを中心に広く使われたM42マウント。
まず、どんなマウントなのでしょうか?
M42マウントとは
M42マウントとは、「スクリューマウント」(ねじマウント)の一種。
レンズマウント自体が口径の大きな(M42では42mm)のネジになっており、カメラに着脱するときにはレンズ自体をくるくると回して行います。
その構造上、レンズの着脱に少し時間がかかります。
現代のレンズ交換式のカメラで使われているバヨネットマウント(60度くらい回すだけで着脱可能)に置き換えられたのもそのためです。
そんなM42マウントが広く使われたのは、製造が容易なため。
基本的には単なるネジなので、1960年代以前の一眼レフカメラがまだ発展途上な時代には、国を問わず採用が相次ぎました。
ただのネジであるためパテントが存在しないのもポイント。
国やカメラメーカーを問わず使えるため、たとえば日本製のカメラにドイツ製のレンズを付けたり、ロシア製のカメラに日本製のレンズを取り付けたりすることもできるのです。
構造が簡単なので安価に購入可能
M42マウントは、単なるネジであるという特徴もあり、高品質なマウントアダプターが安価に手に入るのも特徴。
具体的には、2000円前後のものを選んでおけば問題ないでしょう。
Nikonなどのバヨネットマウント用の製品にも同価格帯のものがありますが、構造の簡易さから、よりスムースな仕上げが期待できます。
中国製の安価な製品には1000円以下のものもありますが、そのような製品は寸法の誤差が大きく、フランジバック(レンズマウント面とイメージセンサーやフィルムの距離)がズレてピントがおかしくなったり、ミラーレス一眼カメラ本体への取付時にガタがあったりなど、トラブルの要因となります。
使いたいレンズによって互換性の問題がある
そんなM42マウントのオールドレンズをマウントアダプターで使う場合、注意したいのが互換性。
M42マウントは構造があまりにも単純なため、各メーカーによって独自に拡張が繰り返されてきました。
そのなかには他メーカーにも広まり事実上の業界標準になったものもあれば、そのメーカーだけの独自仕様になったものもあります。
採用数が多い仕様のレンズには、マウントアダプター側で対応している場合が多いので、マウントアダプターを選ぶ際に気をつければ、問題なく使用が可能です。
いっぽう、メーカー独自仕様のレンズについては、マウントアダプターでの使用が難しいものがあるため、注意したいレンズをこの記事でも解説します。
M42マウントアダプター 購入時の注意点
では具体的には、M42マウントアダプターを購入するときにはどんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
1.自動絞り連動ピン押し込み機構があるものを選ぶ
M42マウントのレンズには、一眼レフカメラでの撮影時に必要な「自動絞り」を内蔵したものが多いです。
自動絞りとは、ファインダーを覗いてピントや構図を合わせるときには絞りが開放になっていて(ファインダーが明るくなる)、撮影のときだけ絞りが設定値に絞り込まれる機構。
1960年代以降のレンズの9割以上は自動絞りを採用しているといえるでしょう。
M42マウントの自動絞りレンズでは、レンズ後ろ側のピン(自動絞り連動ピン)を押し込むことで絞りが閉じるようになっています。
フィルムカメラで使うぶんには、カメラ本体に自動絞り連動ピンを押し込む機構があるので問題ありません。
しかし、ミラーレス一眼カメラには当然そのような機構がないため、マウントアダプター側で対応する必要があるのです。
自動絞り連動ピン押し込み機構のあるマウントアダプター
自動絞り連動ピンを押し込む機構といっても、構造はとても単純なもの。
このように、レンズを装着するネジの内側に、薄い板が円形に張り出しています。
ここにピンがあたることで、自動絞り連動ピンを常に押し込んだ状態にしてくれるのです。
※ミラーレス一眼ではファインダーや液晶が電子的に表示されるので、光学的にファインダーを見るフィルムカメラと違い、絞りを絞り込んでも表示が暗くなることはありません。
M42マウントアダプターを購入するときには、基本的には、幅広いレンズが使える、自動絞り連動ピンを押し込む機構があるアダプターを選ぶことをおすすめします。
レンズにも自動絞りのON-OFF切り替え機構があるものが存在
ちなみに、レンズ本体で自動絞りのON-OFFを切り替えできるレンズも、少なくない数が存在します。
もっとも有名なのがPENTAXのSuper TakumarやSMC Takumar。
レンズの根本にスライド式のスイッチがあり、OFFにすると、自動絞り連動ピンを押し込んだときと同じように、実際の絞りの設定値に絞り込まれます。
ほかにも、国産、海外製ともに多くの製品が同様の機構を内蔵しています。
自動絞りのON-OFF切り替えができないレンズ
いっぽう、自動絞りのON-OFFが切り替えられないレンズもあります。
具体例としては、
・富士フイルムのFUJINON
・Carl Zeiss Jena製のM42マウントレンズ
・ロシアレンズのHelios-44M-4以降(44M-3以前は切り替えスイッチあり)
などがあります。
これらのレンズをミラーレス一眼で使うときには、上記の押し込み機構のあるアダプターが必須です。
(もし押し込み機構がないと、絞り開放でしか使えません)
手動絞りレンズ・プリセット絞りレンズは問題なく使用可能
なお、自動絞りが普及する以前には、手動で絞りを操作するM42マウントレンズも数多くありました。
絞りの値を設定するとそのまま絞り込まれるので、こちらはどんなマウントアダプターでも問題なく使えます。
(ただし、一眼レフカメラではファインダーが暗くなります。ミラーレス一眼では問題ありません)
例としては
・Carl Zeiss JenaのTessarやBiotarなどの古いモデル
・ロシア製のHelios-44(44のあとにMがつかないモデル)
・ロシア製のJupiter-9
などが代表的です。
例:Helios-44
2.レンズを装着したときの角度
もうひとつ注意が必要なのは、レンズを装着したとき、カメラ本体とレンズが正しい角度で止まるのかということです。
M42マウントはただのネジ。
ということは、ネジの山を切りはじめる位置によっては、レンズが上下逆さまの位置で止まってしまう可能性も。
すると、カメラを構えたときに絞りやピントの数字が読めなくなってしまうのです。
解決策は、2000円前後〜の信頼できるメーカーのマウントアダプターを購入すること。
これくらいの値段以上の製品なら、しっかりと角度を考えて製造されているので、そのまま問題なく使えます。
いっぽう、安価なM42マウントアダプターには、レンズ装着部分を回転できるような構造にして、六角レンチで固定しているものもあります。
そのようなモデルは、購入後にユーザーが自分で角度を調整して使うことを前提としています。
使って使えないことはないですが、精度の面では劣っているといえるでしょう。
おすすめのM42マウントアダプター
今回の記事では、作例を撮影した雨樹一期さんはKIPON、執筆スタッフは私物のノーブランド品を使用していますが、2022年現在、これから買うならイチオシのマウントアダプターがあります。
それがK&F Conceptブランドのマウントアダプター。
マウントアダプターとしては定番品ですが、精度と価格のバランスが取れていて、これを選んでおけば間違いないといえるでしょう。
K&F Concept マウントアダプターはこちら
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購入時に気をつけたいM42マウントアダプター用レンズ
M42マウントアダプター本体を購入するときには、上記の2点に注意すれば問題ありません。
いっぽう、マウントアダプター本体が正常でも、レンズ自体の互換性の問題で、うまく装着できない製品も存在します。
1.富士フイルムの開放測光対応FUJINON
富士フイルムのM42マウントを採用したフィルム一眼レフカメラでは、1972年に発売されたフジカST-801以降、開放測光(絞りを絞り込まなくても露出計が使える)のための同時拡張が行われています。
これは、レンズの絞りリング後ろ側にピンを追加し、ボディ側のピンと噛み合わせるもの。
M42マウントアダプターでは多くの場合、開放測光対応の富士フイルム製 FUJINON(フジノン)は、このピンが干渉するため装着ができません。
「バブルボケ」で有名なFUJINON 55mm F2.2も、この問題が生じます。
もし無理にねじ込むと、ピンが接触して絞りリングが回せなくなってしまいますし、当然、無限遠も出ません。
じつは当時のフィルムカメラで使うぶんには、ボディ側のM42マウント部分は幅が狭かったため問題になりませんでした。
現代のマウントアダプターは構造上、マウント面にある程度幅があるため、このような問題が生じてしまうのです。
このピンを削り落としてしまえば装着は可能になるのですが、貴重なオールドレンズに修復不可能な解像を行うことは、正直いっておすすめできません。
M42マウントでFUJINONを使いたい場合、開放測光非対応の初期の製品を選ぶか、これ以上加工品を増やさないため、誰かが加工してしまったレンズを中古で探すのがよいでしょう。
2.Carl Zeiss JenaのElectricレンズ
旧東ドイツのCarl Zeiss Jena(カール・ツァイス・イエナ)でも、開放測光のために独自拡張が行われています。
これはレンズのマウント面に電子接点を設け、カメラとやりとりするというもの。
場合によっては、着脱時にこの電子接点が引っかかるおそれがあります。
ただし、多くの「マウント面が平滑な」マウントアダプターであれば、そのような心配はありません。
Carl Zeiss Jenaの製品について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
M42マウントレンズの取り付け方
では最後に、M42マウントオールドレンズをミラーレス一眼に装着する方法を解説します。
1.用意するもの
用意するのは、
・使用したいオールドレンズ
・マウントアダプター
です。
2.レンズをマウントアダプターに取り付ける
オールドレンズをマウントアダプターに取り付けます。
M42マウントは、マウント部がねじになっているので、時計回りにねじ込んでいきます。
止まるまで回せばOKです。
(取り外しのときは逆回転すればOKです)
3.マウントアダプターに取り付けたレンズを、ボディに取り付ける
カメラ本体に取り付けます。
取り付け方法は、他のレンズを取り付けるときと同様。
カメラ本体と、マウントアダプターの印を合わせて装着します。
これで装着完了です。
マウントアダプターでオールドレンズを使う場合、ピントや露出の合わせ方など、いくつかの設定をするのがおすすめです。
こちらの記事で詳しく使い方を解説しているので、ぜひご覧ください。
装着したレンズ(Super Takumar 55mm F1.8作例)
スーパータクマーについて詳しくはこちら
[オールドレンズ撮り比べ4]PENTAX Super Takumar 55mm F1.8はTHE 入門レンズ。でも実は写りは絶品!
簡単に取り付けられるM42マウントのオールドレンズ。
こんなに味のある写真を撮ることができますよ。
ぜひ、オールドレンズをマウントアダプターでもっと写真を楽しんでみませんか?
M42マウントアダプターでオールドレンズを楽しみませんか?
M42マウントアダプターを購入するときのポイントは2つ。
・自動絞り連動ピン押し込み機構があるものを選ぶ
・ネジの精度が出ている、2000円前後以上の製品を選ぶ
以上のことに気をつけていれば、豊富なM42マウントオールドレンズを問題なく使うことができるでしょう。
M42マウントアダプターを使って、オールドレンズを楽しんでみませんか?
M42マウントのおすすめオールドレンズについては、以下の記事で詳しく解説しています。
また、当店サンライズカメラ公式サイトでも各種M42マウントレンズを取り揃えているので、ご購入の際にはぜひご覧ください!
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