Nikon(ニコン)S3/「レス・イズ・モア」隠れた名レンジファインダー
Nikon S3(ニコンS3)は、「実用のための性能」を備えた質実剛健な名機です。
ニコンの35mmレンジファインダーカメラ。
1950年代に一世を風靡し、その後のニコン一眼レフの礎ともなった、国産高級カメラたちですが、ともすればニコンSPばかりに注目が集中しがちです。
しかしながらニコンS3には、「全部乗せ」のニコンSPとは異なった、無駄を削ぎ落とした美しさが存在しています。
レス・イズ・モア。
少ないことは豊かである。
そんな、思想のこもった国産レンジファインダー、Nikon S3(ニコンS3)を中古で手に入れて、研ぎ澄まされた道具の魅力を味わってみませんか?
目次
Nikon S3(ニコンS3)
1958年に発売されたニコンのレンジファインダーカメラ、Nikon S3(ニコンS3)。
いったい、どんなカメラなのでしょうか?
中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが解説します。
Nikon S3(ニコンS3)の性能・スペック
形式 | 機械式レンジファインダーカメラ |
シャッター | B、1秒〜1/1000秒 機械式 横走り布幕フォーカルプレーンシャッター (最終型はチタン幕) |
露出計 | なし |
ファインダー倍率 | 等倍(アルバダ式) |
ファインダー枠 | 35mm、50mm、105mm |
レンズマウント | ニコンSマウント |
巻き上げ | レバー式、1ストローク |
巻き戻し | クランク式 |
発売年 | 1958年、2000年(復刻版) |
Nikon S3(ニコンS3)の性能面の特徴
Nikon S3(ニコンS3)は、1950年代の国産レンジファインダーとして基本的なスペックをすべて備えているといえるでしょう。
1954年のライカM3発売以降のカメラとして、レバー巻き上げ、クランク巻き戻し、広角から望遠まで対応するファインダー枠の搭載など、高級レンジファインダーカメラに必須の機能はすべて備えています。
さらに、カタログスペックに現れない部分でも、同時代の国産レンジファインダーとは一線を画しています。
それはカメラそのものの堅牢性。
キヤノンをはじめとする当時の高級カメラは、「壊れにくいが、壊れるときは壊れる」カメラでした。
いっぽうで、当時のカメラ雑誌の言を引用するならば、ニコンのカメラは「壊れない」カメラだったのです。
壊れることがない、信頼性抜群のカメラ。
後年に至るまでニコンのカメラに共通する特徴ですが、ニコンS3にも、もちろんその血筋が流れているのです。
ニコンS3の「省略の美」
ニコンSPの簡略版と思われがちなNikon S3(ニコンS3)。
ところが、無駄のない構造を持っているゆえに、優れた使い心地を味わうことが可能となっています。
ニコンS3とニコンSP
ニコンのレンジファインダーの代表機種といえば?
多くの中古カメラファンは、S3に先立って1957年に発売された最高級機種「ニコンSP」の名を挙げるかもしれません。
M型ライカに迫るパララックス自動補正・ブライトフレーム搭載ファインダーを備えたSPは、まさにニコン製レンジファインダーの金字塔ともいえる存在でしょう。
いっぽうでニコンS3は、SPの廉価版とも捉えられがちで、日の当たりにくい存在でした。
一見すると地味にも思えてしまうカメラ、それがニコンS3。
ところが、SPにおけるてんこ盛りの機能を省いたことで、逆説的に使いやすさと美しさを兼ね備えることとなったのです。
少ないことはよいことだ
「Less is more.」
20世紀を代表する建築家、ミース・ファン・デル・ローエの残した言葉です。
訳すと、「少ないことは豊か」という意味。
そう、人間の生み出したモノには、不要な機能が省かれているからの美しさが存在するのです。
ニコンS3もまた、そんな美を体現したかのような1台だといえるのではないでしょうか。
S3とSPの機能を比較
普及機・ニコンS3と高級機・ニコンSPの最大の違いはファインダーです。
ニコンSPは、「ユニバーサルファインダー」と呼ばれる、28mm〜135mmまでのレンズに対応するファインダーを搭載。
28mm・35mmの広角側と、標準〜望遠側のファインダーが2つに別れており、後者にはしっかりとパララックス自動補正も組み込まれています。
いっぽうでニコンS3では、コストダウンのためファインダーを簡略化。
ファインダーは1つだけで、ブライトフレームも35mm〜105mmまでとなっています。
パララックス自動補正もなく、近接時の補正マークが表示されているのみです。
Nikon S3のファインダーは透き通った視界が魅力
このように機能だけを見ると、Nikon S3のファインダーが単なる「安物」のように思えてしまうのも仕方ないことでしょう。
ところが。
あえて簡略化したことにより、ファインダーにおいても、スペックに現れない快適な使い心地を味わうことができるようになったのです。
それが、ファインダーの「抜けの良さ」。
Nikon SPの複雑なファインダーに比べ、Nikon S3の等倍ファインダーはとてもクリア。
まるで直接肉眼で見ているかのような、透き通った視界を味わうことが可能です。
もしかすると、あのライカM3と比較しても負けないほどの覗き心地かもしれません。
メカとしての魅力では、たしかにSPの方が上です。
しかし、使い心地の面では、S3にも大きなアドバンテージがあるといえるでしょう。
どちらを選ぶのかはあなた次第です。
SPよりも中古は安価
そんなニコンS3は、中古価格の面でもSPより安価です。
これはやはりSPの中古カメラファン間の人気によるところも大きいのですが、逆に、手軽にニコン製レンジファインダーを中古で始められるチャンスであるともいえます。
ちなみにS3をさらに簡略化した廉価版、ニコンS4は製造数の少なさから非常に高額な中古価格となっているのも面白いところです。
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Nikon S3(ニコンS3) 中古購入のポイント
それでは、ニコンS3を中古購入する際にはどんな点に気をつけるとよいのでしょうか。
基本的なチェックポイント
まず中古購入時には、シャッター精度、ファインダー二重像のズレ、落下痕がないか、など、基本的な状態チェックは欠かさず行いましょう。
とくに重要なのは、シャッター幕の状態。
ニコンS3は、最後期のものを覗きシャッターは布幕で経年劣化が生じます。
他の中古レンジファインダー同様チェックは必須です。
もちろんベストなのは、オーバーホールや整備が行われた中古を買うことです。
当時の製品を買うか、再生産品を買うか
ニコンS3の中古購入時に迷うのが、1950年代に販売されたものを買うか、再生産品を買うかということ。
ニコンS3は、2000年に復刻版として再生産が行われました。
技術の継承を目的として行われたこの復刻版は、当然ながら、経年劣化や製造時の精度の面で、現役当時のものよりも勝っているといえるでしょう。
また、基本的にコレクターズアイテムのため、外観の状態がよいものが大半です。
しかしながら、もともとマニア向けの商品企画だったこともあり、中古は非常に高いです。
実用として考えた場合には、使うのが怖くなってしまうくらいの中古価格がつくことも。
それに対し、1950年代当時のものは、中古カメラ店では10万円以下で購入可能。
レンズも、ライカに比べれば中古はリーズナブルです。
ニコンS3は頑丈なカメラ。
それなら、当時の個体を中古で手に入れて、まだまだ活躍してもらうのもよいかもしれませんね。
Nikon S3(ニコンS3)で使えるおすすめ用品
露出計のないフィルムカメラの使用にあたっては、アクセサリーシューに取り付けられる露出計を使用するのがおすすめです。 中国製の小型クリップオン露出計としては以下のものが。Nikon S3(ニコンS3)のクリアーなファインダーを楽しもう
このように、ニコンS3は単なる廉価版ではありません。
ニコンSPとは異なった使い心地を持つ、まったく別のカメラなのです。
S3を選ぶかSPを選ぶかはあなた次第。
ぜひ中古で手に入れて、ニコン製レンジファインダーの世界を楽しんでみませんか?
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更新履歴
2022年8月3日
S3の画像を差し替え、追加。
S3 2000の画像を追加。
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