EPSON(エプソン)R-D1/世界初のデジタルレンジファインダーでMマウントレンズを味わう
画像はR-D1xG
EPSON(エプソン) R-D1。
2004年発売の、レンジファインダー(連動距離計)を内蔵したデジタルカメラです。
このblogは「フィルムカメラ大全集」ですが、今回はフィルムカメラと非常に縁が深い、このデジタルカメラについて紹介したいと思います。
カメラの主流が急激にフィルムカメラからデジタルカメラへと移り変わっていった2000年代前半。
レンズが交換できるデジタルカメラも、NikonやCanonをはじめデジタル一眼レフが既に登場していました。
しかし、趣味性の高いレンジファインダーカメラは未だ世に姿を表してはいませんでした。
もしかすると、ライカ(Leica)が世界初のデジタルレンジファインダーカメラを出すのでは。
そんな予想を裏切って、世界ではじめてのデジタルレンジファインダーカメラを生み出したのは、日本のEPSON(エプソン)だったのです。
ベースはVoigtlander(フォクトレンダー)のBESSA R。
レンズマウントはライカMマウント互換で、古今東西のオールドレンズが使えます。
1990年代から続いていた、ライカをはじめとするレンジファインダーカメラの再評価の流れにあって、EPSON R-D1はまさに夢のデジタルカメラだったのです。
いまでは中古がリーズナブルになったEPSON R-D1シリーズ。
フィルムカメラさながらの操作感を楽しんでみませんか?
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EPSON(エプソン) R-D1
※画像はR-D1xG
それではまず、初代機種EPSON R-D1から見ていきましょう。
EPSON R-D1の特徴・スペック
形式 | レンジファインダーデジタルカメラ |
撮像素子 | 610万画素 APS-Cサイズ |
シャッター | B、1秒~1/2000秒 ストロボ同調速度1/125 電子式 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | TTL幕面ダイレクト 実絞り 中央重点測光 |
露出 | 絞り優先AE マニュアル |
ファインダー | 一眼式レンジファインダー 1.0倍 有効基線長38.2mm パララックス自動補正 距離計連動範囲0.7m〜 |
ファインダー枠 | 28mm、35mm、50mm |
レンズマウント | EMマウント (ライカMマウント互換) |
感度 | ISO200、ISO400、ISO800、ISO1600 |
記録メディア | SDカード (SDHC不可) |
電池 | 専用リチウムイオン電池 EPALB1 x1 (富士フイルムNP-80と同形状、互換バッテリーには以下のようなものがあります) 互換バッテリー1(Amazon) 互換バッテリー2(Amazon) |
発売年 | 2004年 |
公式修理 | 2013年終了 |
2004年に姿を表した、世界ではじめてのデジタルレンジファインダーカメラ。
それがEPSON(エプソン)のR-D1でした。
なぜこのカメラが登場したのでしょうか?
そもそも直前の1990年代には、高性能・高機能の一眼レフカメラと、使いやすく簡便なコンパクトカメラに二分され、レンジファインダーカメラはマイナーな存在になっていました。
しかし、カメラ愛好家にとって、レンジファインダーカメラは特別な存在だったのです。
1990年代を通じ、M型ライカをはじめとするレンジファインダーカメラが非常に趣味性の高い道具として注目を浴びます。
その流れのなかで、Voigtlander(フォクトレンダー) BESSA Rや安原一式といった、新開発のレンジファインダーカメラが登場するまでに至りました。
しかし、歴史の浅かったデジタルカメラは、まだまだ実用の道具としての色が濃いものでした。
デジタルカメラが一般に受け入れられはじめたのが1995〜1996年頃なので仕方がないことでしょう。
むしろ、2004年というときにこの機種が世に出たのは、デジタルカメラがアーリーアダプターだけのものではなくなったことを示していたのかもしれません。
ベースはBESSA Rシリーズ
画像を見ればひと目でわかるとおり、EPSON(エプソン) R-D1はコシナ・Voigtlander(フォクトレンダー)のBESSA Rシリーズをベースとしています。
BESSA R
機構的部分の性能についても、基本的にはBESSA Rシリーズそのもの。
絞り優先AEを搭載しているので、BESSA R2Aに相当する機能であるといえます。
BESSAについて詳しくはこちら
イメージセンサーはAPS-Cサイズ
SONYαのようなミラーレスと異なり、レンズ交換時にもシャッターは閉じています(画像はR-D1xG)
撮像素子(イメージセンサー)は610万画素。
当時のレンズ交換式のデジタルカメラとしては標準的な画素数です。
センサーサイズはAPS-Cで、装着したレンズの換算焦点距離は1.5倍となります。
具体的には
28mm→42mm
35mm→52.5mm
50mm→75mm
相当となります。
例:フルサイズで画像全体が写るレンズの場合、「青い範囲」が写る。
内蔵されたファインダーのブライトフレーム(ファインダー枠)は上記の3種類となっており、ちょうど広角・標準・望遠に対応するわけです。
APS-Cサイズなのは、後述する後継機種含め共通です。
時代を反映して最高感度はISO1600までですが、フィルムカメラ同様の使い心地として考えた場合、そこまでマイナスに捉えなくてもよいのではないでしょうか。
画質面ではフィルムでの撮影に近い粒状感を演出。
いわゆるデジタルっぽいパキパキの解像感とは異なる、オールドレンズでの作品制作にぴったりな画を出力してくれます。
デジタルカメラなのに巻き上げられる
画像はEPSON R-D1xG
EPSON R-D1の趣味性の高さを如実に表しているのが、「巻き上げレバーがある」ということ。
ほかのデジタルカメラには、当然ながら巻き上げレバーなどありません。
巻き上げるためのフィルムなど入っていないのですから。
じつはこの機構は必然性があるもの。
Voigtlander BESSAのシャッターは機構上、撮影前にシャッターを機械的にチャージする必要があります。
普通の電子式フィルムカメラやデジタルカメラでは電気的にモーターでチャージを行うのですが、元となったVoigtlander BESSAにはそのような機構がありません。
そこで、EPSON R-D1では逆転の発想で、「シャッターチャージレバー」として巻き上げレバーを残したのです。
愛好家のためのカメラという立ち位置だったからこそ受け入れられた機構だといえるでしょう。
液晶を隠すとフィルムカメラそのもの
また、EPSON R-D1の背面液晶は反転式。
裏返すと、M型ライカを彷彿とさせる丸い形状で、35mmフルサイズとAPS-Cサイズの焦点距離換算表が設けられています。
操作ボタンも反転部分に設けられていて、裏返した場合、液晶も操作ボタンも見えなくなります。
液晶サイズは2.0型と、現在から見ると少々小さめですが、その分、裏返して隠すというギミックには最適だったといえるかもしれません。
軍艦部の表示はアナログ指針式
画像はEPSON R-D1xG
デジタルカメラということで各種の情報を表示する必要がありますが、下手に液晶を設けてしまったら興ざめです。
そこで本機種では軍艦部上面にアナログ指針式の表示を採用。
ホワイトバランス、撮影可能枚数、記録品質、バッテリー残量が針で指し示されるようになっています。
そもそもEPSONの社名は「セイコーエプソン」。
時計のSEIKOのグループ企業なのです。
それもあり指針部にはSEIKOのクオーツ時計ゆずりのムーブメントを採用。
SEIKOの遺伝子を受け継いだ企業ならではのこだわりだといえます。
この表示は後継機にも受け継がれています。
EPSON R-D1s
EPSON R-D1sは、2006年に登場した、R-D1のマイナーチェンジ版です。
EPSON R-D1sの特徴・スペック
形式 | レンジファインダーデジタルカメラ |
記録メディア | SDカード (SDHC不可) |
電池 | 専用リチウムイオン電池 EPALB1 x1 (富士フイルムNP-80と同形状、互換バッテリーには以下のようなものがあります) 互換バッテリー1(Amazon) 互換バッテリー2(Amazon) |
発売年 | 2006年 |
公式修理 | 2016年終了 |
※その他、基本的にR-D1同様
ソフトウェア的に洗練
初代R-D1から変わったのがソフトウェア面。
代表的な改良点は以下のようなものとなります。
なお、初代R-D1も2006年のファームアップで同様の機能となりました。
初代R-D1を使う場合、基本的にはファームアップを行ったほうがよいといえます。
RAW+JPG 同時記録が可能に
初代R-D1ではRAWデータでの撮影時にJPGの同時記録ができませんでしたが、R-D1sでは可能となりました。
ISO1600時のノイズを低減
ISO1600での高感度撮影時のノイズが減り、実用性が増しました。
長時間露光時ノイズ軽減モードを搭載
デジタルカメラでは長時間露光を行った際にノイズが増加しますが、軽減モードが搭載されました。
EPSON R-D1x(EPSON R-D1xG)
EPSON(エプソン) R-D1xは、2009年に登場した同シリーズの最終機種です。
EPSON R-D1xの特徴・スペック
形式 | レンジファインダーデジタルカメラ |
記録メディア | SDカード、SDHCカード |
電池 | 専用リチウムイオン電池 EPALB1 x1 (富士フイルムNP-80と同形状、互換バッテリーには以下のようなものがあります) 互換バッテリー1(Amazon) 互換バッテリー2(Amazon) |
発売年 | 2009年 |
公式修理 | 2021年3月31日まで |
※その他、基本的にR-D1同様
EPSON R-D1xが登場した2009年という時期は、すでにライカがデジタルレンジファインダーカメラのM8を送り出したあとでした。
ライカM8
一時は「デジタルライカはR-D1のOEMになるのでは?」とさえ囁かれたのですが、ライカはその後、現在に至る独自開発の高級デジタルカメラ路線に進んでいくこととなります。
その分、高級カメラならではの非常な高価格になってしまったライカM8に比べ、同じAPS-Cサイズのデジタルレンジファインダーカメラが現実的な値段で入手できることが強みだったかもしれません。
液晶モニターが大型化
EPSON R-D1xでは液晶モニターが、それまでの2.0型から2.5型に大型化しました。
この点は最新の機種にほぼ劣らないといえるでしょう。
その代わり、R-D1とR-D1sにはあった液晶反転機構はオミットされてしまいました。
グリップを装備
EPSON R-D1xは底面にねじ込む専用グリップを装備したセットで販売されました。
カメラ本体の名称はR-D1xですが、製品名はグリップのGがついたR-D1xGとなります。
SDHCカードに対応
嬉しい改良点がSDHCカードへの対応。
前2機種は2GBまでのSDカードにしか対応しておらず、いまから見ると少々古いスペックに感じるのは仕方がないところでした。
その点R-D1xは32GBまで対応。
610万画素ということもあり、ほぼ無尽蔵に撮影可能といえます。
いま、R-D1シリーズを使う意味
初代R-D1登場が2004年、最終機R-D1x登場が2009年。
すでにデジタルカメラとしては古い部類となりつつあるEPSON R-D1シリーズですが、その魅力は変わることなく、愛好家の間でも珍重されています。
いまEPSON R-D1を中古で使う意味とは。
そして、これからR-D1シリーズを使うならどんなことに気をつければよいのでしょうか。
「ライカ以外」のデジタルレンジファインダーカメラ
レンジファインダーカメラ、かつデジタルカメラの機種としては、実質的にはM型ライカしかないといえます。
2018年にはロシアのZENIT Mも発表されましたが、実質的にはデジタルのM型ライカそのものです。
そして、デジタルのM型ライカはラグジュアリーな高級機路線。
そう考えたときに、普段着感覚で使えるEPSON R-D1シリーズの存在価値が大きく光ってくるといえるのではないでしょうか。
発売から年月を経て、中古の値段が大きく下がってきているのもうれしいところ。
本当なら、R-D1シリーズの後継機もしくは他社製のデジタルレンジファインダーカメラがフルサイズで登場してくれたらよいのですが、「オールドレンズを使う」という意味では、フルサイズミラーレス一眼がどんどん登場している状況では難しいといえるかもしれません。
もしかすると日本メーカーで唯一のデジタルレンジファインダーカメラになるかもしれない。
そんな唯一無二の機種であることも大きな魅力なのです。
中古で同じくAPS-CサイズのライカM8を買うなら、R-D1シリーズのほうを選ぶのは十分に賢い選択肢です。
ギミックと操作感はM型ライカ以上
デジタルのM型ライカになくて、EPSON R-D1シリーズにあるもの。
それが巻き上げレバーです。
これは、フィルムカメラを使い慣れて、デジタルでも「フィルムカメラのように撮りたい!」と思っている方にとって重要なポイント。
シャッターを切って、手で巻き上げて、次の撮影に移行する。
そのリズムを体感できるデジタルカメラは、EPSON R-D1シリーズをおいてほかにありません。
写真を撮ったあと背面の液晶画面を見るのが当然になってから長い時間が経ちますが、EPSON R-D1シリーズで撮影していたら、そこに液晶があることさえ忘れてしまうのではないでしょうか?
デジタルのM型ライカでは、行き場を失った右手の親指のためにサムレストをアクセサリーシューに付けることが行われていますが、R-D1シリーズならそんな必要もありません。
これからR-D1シリーズを中古で買うなら
これから中古でR-D1シリーズを探すなら、おすすめはR-D1xだといえます。
なんといってもSDHCカードが使えること。
そして、この記事を書いている2019年時点では、2021年3月31日まで公式に修理対応が行われているのも大きなポイントです。
参考:EPSON公式サイト「修理対象機種・料金一覧」 2019年2月21日閲覧
いっぽうR-D1とR-D1sについては、画素数は同じ610万画素ですが、SDカードしか使えないことが少々マイナス。
ただし、RAWで撮った場合20MB、30MBは当たり前の2000万〜3000万画素級機種に対して、610万画素のR-D1シリーズでは一桁MB台なので、その点は有利です。
R-D1とR-D1sは修理対応が既に終了してしまっているため、中古購入時には状態確認をしっかり行い、信頼できる中古カメラ店で、保証付きで購入するのがおすすめです。
R-D1シリーズで使いたいオールドレンズ
EPSON R-D1シリーズなら、古今東西のライカLマウント・Mマウントレンズが使い放題。
ライカレンズはもちろん、日本製、ロシア製など選択肢は無数にあります。
APS-Cサイズのため、最初にセットで選ぶなら28mm(換算42mm)か35mm(換算52.5mm)がおすすめです。
詳しくは、こちらのオールドレンズ紹介記事をご覧ください。
オールドデジタルカメラを楽しむ最高の選択肢
このように、EPSON R-D1シリーズは、多くの点でデジタルカメラとして他にはない、唯一無二の特徴を持っています。
デジタルカメラが普及しはじめた1990年代から時間が経つとともに、「オールドデジカメ」という概念が生まれつつあります。
もし2000年代を代表するオールドデジカメを選ぶとしたら。
EPSON R-D1はその候補の筆頭だといえるでしょう。
趣味性の高い、カメラ好きのためのデジタルカメラ。
デジタルM型ライカにさえ存在しない魅力があるデジタルカメラ。
EPSON R-D1シリーズを、いま再び、使ってみませんか?
2023年最新!おすすめミラーレス一眼カメラベスト3!!
オールドレンズを楽しむのにも最適!写真にも動画にもおすすめのフルサイズミラーレス一眼カメラを選ぶならこのカメラ!!
写真・動画どちらもハイクオリティ、迷ったらこの一台!
価格と性能のバランスが取れた名機です!
どこでも持ち歩ける相棒です。
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