Konica(コニカ)Pearl/小西六 パール 中判蛇腹カメラを使うならPearlを選んでみませんか?
パールIV(Pearl IV)
いま見直されている中古のフィルムカメラ、今回はそのなかでも、クラシカルな外観の蛇腹カメラ「パール」(Pearl)について紹介したいと思います。
「昔のカメラ」といえば?
蛇腹のついたカメラを思い浮かべる人もいるかもしれません。
蛇腹のカメラは大昔の骨董品で、ただの置き物にしかならないと思っている方も多いかもしれませんが、じつは蛇腹フィルムカメラはいまでも撮影可能。
しっかりと整備された蛇腹カメラなら、フィルムを入れていまでも味のある写真を撮影することができるんです。
これから蛇腹のついた中古フィルムカメラを購入するなら、ぜひおすすめしたい機種が小西六(コニカ)のパール(Pearl)。
コニカ パールは日本製の蛇腹カメラの代表格で、品質、仕上げの良さともにトップクラスの機種です。
それでいてコニカ パールは中古の値段も安め。
クラシックな中古フィルムカメラは、じつは案外身近に始めることができるのです。
それでは、コニカ パールはいったいどんなカメラなのか、詳しく見ていきましょう。
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小西六(コニカ) パール
小西六(コニカ)のパール(Pearl)とはいったいどんな機種なのでしょうか?
そして、蛇腹を使った中古フィルムカメラとはいったいどんなもの?
まずはパールとはどんなカメラなのか解説します。
※当時、「コニカ」は35mmフィルムカメラの機種名で、ブランドはコニカではありませんでしたが、便宜上コニカ パールと表記します。
コニカのパールとは?
パール(Pearl)とは、小西六(のちのコニカ)が戦後、1940年代から1950年代にかけて発売したフィルムカメラのこと。
「120フィルム」という種類のフィルムを使うカメラで、中判カメラに分類されます。
一見してすぐに気づく特徴が、蛇腹をつかったクラシカルな外観です。
蛇腹を使ってコンパクトに折りたためる
コニカ パールが蛇腹を使っている理由。
それが、コンパクトに折りたたむためです。
カメラに求められる重要なことのひとつが、「いつでも持ち運べる」こと。
写真は、実際にその場所に行かないと撮ることができません。
だからこそ、写真が発明されて以降、カメラは常に小型化に向かって改良されてきたのです。
それは現在のデジタルカメラでもまったく同じ。
スマホにカメラが内蔵されているのも、いつでも持ち歩くデバイスだからこそのことなのです。
さて、技術上カメラ自体をそこまで小さくできない大判や中判のカメラを簡単に持ち歩けるようにするには、特別な工夫が必要でした。
それこそが、蛇腹を使うことだったのです。
蛇腹は19世紀からカメラに用いられてきましたが、その長い歴史から見れば、この記事で解説しているコニカ パールは、蛇腹カメラとしては(FUJICA GS645等を除けば)最後期のものにあたるといえるでしょう。
スプリングカメラ
このコニカ パールのような、中判の蛇腹カメラのことを、「スプリングカメラ」といいます。
名前の由来は、蓋を開けるときに、バネ(スプリング)の力でワンタッチで開くことができるため。
同様の形式の日本製スプリングカメラは戦前1930年代から戦後1950年代まで盛んに作られましたが、コニカ パールはそれらのなかでも最高級品に属するものです。
コニカ パールと他のスプリングカメラの違い
それでは、コニカ パールは他のスプリングカメラに比べて、どんなところが高級だったのでしょうか?
それが、連動距離計を搭載しているということ(パールII以降)。
レンズでピントを合わせると、ファインダーの二重像が左右に動いてピント合わせができるレンジファインダーカメラ。
35mmフィルムカメラでは数多く存在していますが、じつは中判のスプリングカメラでは、完全に距離計が連動する機種は少数派なのです。
このコニカ パール以外の国産機種では、最高級スプリングカメラのスーパーフジカシックス(SUPER FUJICA SIX)と、バックフォーカス方式の旧マミヤ6など、距離計が連動するもののほうが少なく、ほかは距離計を搭載していても、表示を見ながら自分で距離指標を合わせる必要のある非連動距離計しか積んでいないのです。
国産中判レンズ随一の描写を誇るヘキサー(Hexar)
そして。
コニカ パールの地位が確固たるものとなった理由のひとつに、銘レンズとして知られる「ヘキサー」(Hexar)を搭載していたことがありました。
コニカのHexarといえば、後年同名の高級コンパクトカメラが発売されたくらいに、中古カメラ愛好家の間で高性能かつ味のある銘レンズとして有名な存在。
コニカ パールにはヘキサー75mmが搭載されていますが、645判(セミ判)の画面サイズでもまったく見劣りのしない、キレの良い描写を見せてくれます。
そもそも当時、中判のなかでも画面サイズの小さいセミ判は、常用されるカメラとしては35mm判の次に小さい画面サイズ。
それだけに、レンズにも解像度が求められたのでしょう。
同じような中古のスプリングカメラのなかでも、コニカ ヘキサーの描写力は頭一つ抜きん出た秀逸なものに仕上がっているのです。
コニカ パール各機種解説
ではここから、コニカ パール(Pearl)の各機種について簡単に解説していきます。
距離計を搭載したパールの前史にあたる、距離計のないセミパールについても触れます。
セミパール(Semi Pearl, 1938年)
セミパールは、小西六(のちのコニカ)から1938年[1]田中政雄「KONICA HISTORY 5 昭和8年~20年」よりセミパールの項『クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、p.44に登場したスプリングカメラ。
セミという名前からもわかるように120フィルムを使用するセミ判(645判)。
折りたたみ式のビューファインダーを装着する、戦前のものとしてはオーソドックスな折りたたみ式のスプリングカメラで、1938年の戦前型と、戦後1946年に復活した戦後型に大別できます。
レンズはOptor 7.5cm F4.5(3群3枚)もしくはHexar 75mm 7.5cm F4.5。
この時点ですでに、前玉回転ではなくヘリコイドによるピント合わせという高級仕様になっていることが目を惹きます。
パールI型(Pearl, 1949年)
レンズ | Hexar 75mm F4.5 |
シャッター | Durax B, T, 1秒〜1/100秒 |
距離計 | 非連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 赤窓式 |
シャッターチャージ | 手動 |
多重露光防止 | なし |
距離計を初めて搭載したモデルが、1949年のパール(Pearl)です。
後継機種と区別するために、便宜上パールI(Pearl I)と呼ばれることも多いです。
シャッターは1/100秒までのDURAXです。
当機に搭載されたF4.5のHexarは、スペックだけ見ると開放F値が暗く地味に感じますが、じつは非常に高性能。
下で紹介するもっと明るいレンズのついたPearlとはまた違った魅力があるカメラです。
パールIの時点では、まだ距離計は連動ではなく、距離計の指し示した値をもとに、レンズの距離指標を手動で合わせる必要がありました。
↑このように、ボディ上部に距離計ダイヤルがあります。
巻き上げは赤窓式です。
パール RS(Pearl RS, 1950年)
レンズ | Hexar 75mm F4.5 |
シャッター | KONIRAPID-S B, T, 1秒〜1/500秒 |
距離計 | 非連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 赤窓式 |
シャッターチャージ | 手動 |
多重露光防止 | なし |
パールI RSとも呼ばれます。
シャッターが最高速1/500秒のコニラピッドSになりました。
パールII(Pearl II, 1951年)
レンズ | Hexar 75mm F4.5 Hexar 75mm F3.5 |
シャッター | KONIRAPID-S B, T, 1秒〜1/500秒 |
距離計 | 連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 赤窓式 |
シャッターチャージ | 手動 |
多重露光防止 | なし |
パールIIからは、距離計がピント合わせと連動するようになりました。
またレンズには名玉と名高い75mm F3.5が加わりました。
ただし、明るい75mm F3.5が必ずしもすべての面で優れているとは限らず、暗めの75mm F4.5も設計に無理がないので描写の総合性能では優れているともいわれます。
↓の画像のように、ボディ上面には被写界深度の指標がついています。
パールIIB(Pearl IIB, 1951年)
レンズ | Hexar 75mm F3.5 |
シャッター | Dulax S B, T, 1秒〜1/400秒 |
距離計 | 連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 赤窓式 |
シャッターチャージ | 手動 |
多重露光防止 | なし |
シャッターが最高1/400秒のDulax-Sなのが最大の違い。
レンズはF3.5のみ。
距離の表示も異なり、II型では軍艦部上部の表示が連動し被写界深度を表示していたのに対し、IIB型ではレンズ自体に距離目盛りが刻まれ、被写界深度を知りたいときには手動で専用のリングを回す方式となりました。
これから中古で購入する場合、実用上はII型とIIB型をそこまで気にする必要はないかもしれません。
パールIII(Pearl III, 1955年)
レンズ | Hexar 75mm F3.5 |
シャッター | KONIRAPID-S/SEIKOSHA-MX/SEIKOSHA-MXL B, T, 1秒〜1/500秒 |
距離計 | 連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 自動巻き止め |
シャッターチャージ | 手動 |
多重露光防止 | なし |
パールIIIでは赤窓が廃止され、自動巻き止め式となりました。
ただしシャッターチャージは連動せず、多重露光防止もないため二重撮りには注意が必要です。
シャッターの種類にはバリエーションがあります。
1955年の発売開始時はそれ以前の機種同様KONIRAPID-S。
1956年にはシャッターがSEIKOSHA-MXとなり、1957年にはさらに、ライトバリュー方式のSEIKOSHA-MXLとなりました[2]菱田耕四郎「KONICA HISTORY 10 戦後のカメラ」よりパールの項『クラシックカメラ専科No.10 小西六カメラの歴史』1987年、朝日ソノラマ、pp.72-73。
パールIV(Pearl IV, 1958年)
レンズ | Hexar 75mm F3.5 |
シャッター | Seikosha MXL B, T, 1秒〜1/500秒 |
距離計 | 連動 |
使用フィルム | 120フィルム |
判型 | 645判(セミ判) |
フィルム送り | 自動巻き止め |
シャッターチャージ | セルフコッキング |
多重露光防止 | あり |
パールIVはパールの最終機種。
それまで板金ボディだったのが、ダイカスト製となり堅牢かつ精度が向上しました。
ただしボディは大型化しています。
セルフコッキングでシャッターチャージは巻き上げと連動。
ファインダーも採光式ブライトフレームに。
それまでのパールとはまったく別のカメラに仕上がっています。
完成度は非常に高いですが、当時は120フィルムの中判スプリングカメラの衰退期だったため製造数が少なく、プレミアがついていることも多いです。
シャッターはセイコーシャMXLでライトバリュー方式です。
本機は間違いなく日本製スプリングカメラの最高峰。
一度は使ってみたい小西六の名機です。
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コニカ パール 中古購入と使用の注意点
それでは、コニカ パール(Pearl)をこれから中古で購入して使うときに、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
1.まずは蛇腹の状態をチェック!
コニカ パールのような蛇腹を使った中古フィルムカメラでもっとも多いのが、蛇腹からの光線漏れのトラブル。
蛇腹は革や紙、布を組み合わせた薄い素材で作られているため、使用しているうちに経年劣化で角の部分に穴(ピンホール)が空いてしまうのです。
蛇腹の穴は蛇腹の交換で修復することもできますが、購入後に修理に出すと費用は高額になってしまいます。
これから中古で購入する場合には、もともと蛇腹の状態がよいか、修理済みのものを探すのがおすすめです。
2.ファインダーと距離計の状態をチェック
コニカ パールは中古の1950年代製スプリングカメラとしては高級なレンジファインダーを搭載しています。
だからこそ、購入時にはファインダーはクリアーか、距離計に狂いはないか、二重像は薄くなっていないかをチェックしましょう。
3.カメラの開閉で勢いをつけるのはNG
コニカ パールのようなスプリングカメラを開くとき、バネの力に任せて勢いよく開いていませんか?
スプリングカメラの開閉ギミックは趣味的に楽しいもの。
ですが、急激な開閉は蛇腹に負担がかかります。
蛇腹の劣化を防ぐためにも、開閉するときは手を添えて、ゆっくり開くのがおすすめです。
小西六 Pearl(パール)で使いたい用品・グッズ
Pearl(パール)は露出計は内蔵していないため電池は不要です。
撮影にあたってはとくに必要なものはありません。
ただし、ストラップ金具がないため、専用の革ケースがあるとより便利に撮影できるでしょう。
フィルムは120フィルム(中判フィルム)を使います。
2022年現在手に入るカラーネガとしては以下の2種類がおすすめです。
スプリングカメラを中古で手に入れるならパールがおすすめ
小西六のパール(Pearl)は、日本製の蛇腹カメラ(スプリングカメラ)の代表格かつ完成度の最も高い機種のひとつ。
もしクラシカルなスプリングカメラを中古で探しているなら、もっともおすすめな機種だといえるでしょう。
小さく折り畳めるスプリングカメラは、見た目の印象に反して実力抜群。
折り畳める構造の合理性もきっと感じることができるでしょう。
ぜひパールをあなたのパートナーにしてみませんか?
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更新履歴
画像が抜けていた箇所すべてに新規画像を挿入。参考文献(クラシックカメラ専科No.10)をもとに加筆修正。
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