Nikon(ニコン)FA/ニコン初のマルチモードAE・マルチパターン測光機
今回はニコンのフィルム一眼レフカメラ、Nikon FAについて解説します。
中古のフィルムカメラのなかでも、その仕上げと信頼性、ニッコールレンズの描写力の高さからとても人気が高いニコン。
1983年発売のNikon FAは、そんなニコンのフィルム一眼レフカメラに新境地を切り開いた機種です。
ニコンFAには、2つの大きな特色があります。
まず、ニコンのフィルム一眼レフカメラでは初となる、絞り優先・シャッター優先・プログラムAEのすべてを搭載したマルチモード機であるということ。
そして、世界初の「マルチパターン測光」を搭載したカメラであることです。
カメラがどんどん賢くなっていく1980年代。
まさに最新のカメラが皆のあこがれだった時代を象徴するような名機だといえるでしょう。
80年代レトロなデザインも魅力のニコンFA。
今回は、「マルチニコン」ニコンFAについて、中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラのスタッフが徹底解説します。
目次
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価格と性能のバランスが取れた名機です!
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ニコンFA
まず最初に、ニコン FA(Nikon FA)の性能やスペックから見ていきましょう。
ニコンFAの性能・スペック
ブラックモデル
形式 | 35mmフィルム一眼レフカメラ |
シャッター | B、8秒~1/4000秒 電子式(B、1/250は機械式) 縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター |
露出計 | マルチパターン測光 TTL開放中央重点測光 SPD受光素子 |
AE | 絞り優先AE シャッター優先AE プログラムAE |
ファインダー | 視野率約93% 倍率約0.8倍 |
レンズマウント | ニコンFマウント |
対応レンズ | Ai-Sレンズ(全モード使用可能) Aiレンズ(一部プログラムを除き使用不可) ※非Aiレンズは使用不可 |
電池 | LR44(Amazon)x2またはSR44(Amazon)x2 |
発売年 | 1983年 |
ニコンFAは、1983年に発売されたフィルム一眼レフカメラ。
いまでも中古で人気が高いNew FM2やFE2の兄弟であるとともに、さらにハイスペックを実現した、兄貴分のカメラです。
この機種でニコンが盛り込んだ新基軸が「マルチモードAE」と「マルチパターン測光」。
当時のニコンはカメラ製品に愛称をつけていたのですが、ニコンFAの場合は「マルチニコン」と、FAの多機能への自信のほどがうかがえます。
ちなみにほかの機種にも愛称があり、ニコンFMは「コンパクトニコン」、FEは「シンプルニコン」、F3が「スーパーニコン」です。
はじめてのマルチモードAE機
ニコンFAの機能面での1つ目の特徴。
それが、マルチモードAE機であるということです。
搭載モードは
・絞り優先AE(現在でいうAモード)
・シャッター優先AE(Sモード)
・プログラムAE(Pモード)
・マニュアル露出(Mモード)
現在のデジタル一眼レフカメラにまで引き継がれる4モードを、はじめてすべて搭載したニコン製フィルムカメラなのです。
4モードを搭載したフィルムカメラは、すでに1977年、Canon A-1で実現。
またプログラムAEは、前年の1982年に発売されたニコンFGにも搭載されていますが、シャッター優先AEまで搭載したのはニコンFAが初。
技術が成熟するまで待ち、満を持して送り出されたニコンFAは、より完成度の高いフィルムカメラに仕上がっているといえるでしょう。
瞬間絞り込み測光により高い互換性を実現
ニコンFAのシャッター優先AEとプログラムAEでは、「瞬間絞り込み測光」という方式を採用しています。
瞬間絞り込み測光とは、シャッターを切るときに自動で絞りが絞り込まれた際、「再び」露出を測る方式のこと。
これにより、より精度の高い自動露出が可能となったのです。
瞬間絞り込み測光が採用された理由
瞬間絞り込み測光が採用されたのは、過去のニコンレンズとの互換性のため。
1977年に発売されたAiニッコールレンズは、絞りをボディ側から正確に制御することが難しく、シャッター優先AEやプログラムAEに不向きな仕様でした。
1980年にモデルチェンジしたAi-Sニッコールではその弱点を修正しましたが、豊富なレンズ資産をもつニコンとしては、古いタイプのレンズをサポートしないわけにはいきません。
そこで逆転の発想として、撮影するまさに直前の光の量を計測することで、誤差を補正し、正確な露出を得られるようにしたのです。
なお同様の機構は、1982年のニコンFGでも採用されています。
なお、ニコンFAで使用可能な中古レンズについては後述します。
焦点距離により適切なシャッター速度を選択
また、ニコンFAのシャッター優先AEとプログラムAEには、望遠レンズを取り付けた際に、自動でシャッター速度が速くなるプログラムシフト機構が採用されています。
望遠レンズのほうが標準レンズや広角レンズよりも、手ブレする可能性が高くなります。
手ブレしにくいシャッター速度は、一般に「焦点距離分の1」とされており、200mmのレンズなら1/200秒、300mmなら1/300秒のシャッターを切ることが最低限必要。
ニコンFAのボディと、焦点距離が135mm以上のAi-Sニッコールには、望遠レンズを識別するレバーと突起が設置されており、自動的に約1.5段分、高速なシャッターが切られるようになります。
(標準レンズで1/125秒の場合、約1/350秒)
ニコンFAの望遠レンズ検出機構
世界初のマルチパターン測光
そして、ニコンFAの先進性を決定づけるもうひとつの機能。
それがマルチパターン測光です。
マルチパターン測光とは、撮影する範囲の光の強さを分割して測光し、自動的に適切な露出を求める機能のこと。
ニコンFAの場合、画面全体を5分割で測光しています。
画面を分けて測る「分割測光」は、1960年代のミノルタSRT-101が画面を上下に分けて測光したことが先駆け。
ですが、明白に高い効果が得られる多分割測光を実用化したのは、このニコンFAが初めてなのは間違いありません。
マルチパターン測光は、現在のデジタルカメラでは当然のように搭載される機能にまで進歩しています。
マルチパターン測光により、例えば「空が多く入っている写真」や「逆光での撮影」など、そのままでは露出アンダー(写真が暗い)になりがちな状態でも、簡単に適正露出で撮影可能です。
マニュアルフォーカスの中古フィルムカメラながら精度の高い露出が求められるため、初心者の方でも安心です。
なお、レンズマウント脇にあるダイヤルを回すことで、中央重点測光にも切り替え可能です。
最高シャッター速度1/4000秒、シンクロ速度1/250秒
同時代のニコン製フィルム一眼レフカメラ、New FM2とFE2同様、ニコンFAも超高速シャッターを搭載。
最高シャッター速度は1/4000秒。
そして、ストロボシンクロ速度は1/250秒と、当時の最上級機ニコンF3をしのぐスペックです。
ニコンFAのシャッターは電子式で電池が必要ですが、1/250秒とB(バルブ)は機械式となっており、万一の電池切れのときも安心です。
80年代テイストあふれるボディ
ニコンFAのトップカバーはプラスチック製。
ですが、シルバーモデル、ブラックモデルともに非常に上質な仕上げが施されており、質感は非常に良好です。
フィルムカメラらしい伝統的なデザインですが、ファインダー上部の透明な採光窓や、右手のホールド感を増すグリップなど、1980年代ならではのデザインが各所に散りばめられています。
少し丸みのついたトップカバーは、ニコンF3にも通じるデザイン処理。
古さと新しさが混在する、1980年代らしいデザイン。
セミレトロで可愛い中古カメラがほしい方にもおすすめできるといえるでしょう。
第一回カメラグランプリを受賞
この高機能と先進性により、ニコンFAは1984年、「第一回カメラグランプリ」でもっとも優れたカメラに選出されています。
当時のカメラ雑誌や評論家がもっとも優れたカメラを選出するこの賞は、日本のカメラが世界を席巻していた1980年代、すなわち世界一のカメラを決める賞でもありました。
最高峰の先進ニコン、ニコンFA。
その多機能は、いまではカメラのスタンダードとして脈々と受け継がれているのです。
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ニコンFAの限定モデル
ニコンFAの通常モデルはシルバーとブラックですが、中古でコレクター人気の高い限定モデルが存在します。
ニコンFAゴールド
ニコンFAゴールドは、上述した「カメラグランプリ」受賞の記念モデル。
カメラ全体に金メッキが施され、貼り革は茶色のヘビ革に。
Ai-S Nikkor 50mm F1.4がセットとなり、こちらもレンズキャップに至るまでゴールド仕上げになっています。
限定2000台。
当時の定価は50万円で、いまでもコレクターズアイテムとして中古は高値で取引されています。
ニコンFA 中古購入時の注意点
さて、そんなニコンFAを中古で購入する際にはいくつかの注意点があります。
動作確認時はシャッター速度に注意
ニコンFAに限ったことではありませんが、当時のニコン製一眼レフカメラは、フィルムカウンターが「1」になるまでシャッター速度が1/250秒で切れるようになっています。
これは、フィルム装填時にAEが作動してスローシャッターが切られてしまわないようにするための工夫。
中古をチェックする際、シャッター速度が変化しないと思っても、故障ではありません。
電子カメラなので中古の状態チェックは念入りに
ニコンFAは高機能を実現するため高度に電子化されたフィルムカメラ。
そのため、電子基板の不具合は修理が難しいこともあります。
もし中古で購入するときには、自動露出や電子シャッターの動作を念入りにチェックするのがおすすめです。
ニコンFAで使える中古レンズ
最後に、ニコンFAで使用できるレンズについて解説します。
普段、AiニッコールとAi-Sニッコールの違いを意識することは他のカメラではあまりないかもしれませんが、プログラム機のFAではわずかですが動作が変わります。
中古レンズを購入する際は、Ai-Sニッコールを選ぶとベストだといえるでしょう。
ニコンのレンズについては以下の記事でも解説しています。
Ai-Sニッコール
Ai Nikkor 50mm F1.4Sのように、名前にSがつくレンズです。
上述したように望遠レンズには後部にプログラムシフト検出用の突起がつき、シャッター速度が早くなります。
また、自動絞りを連動させるレバーの動作が、絞り値に直線的に比例したものとなっており、より精度の高い自動露出が可能です。
AiニッコールとAi-Sニッコールのわかりやすい見分け方は絞りリング。
絞りのもっとも大きい数字がオレンジ色なのが「Ai-Sニッコール」、それ以外が「Aiニッコール」です。
絞り環のあるオートフォーカスレンズも動作は同様
AFニッコールやAFニッコール(Dタイプ)など、絞り環のあるAFレンズも、Ai-Sレンズ同様に使用可能です。
絞り環のない「Gタイプレンズ」は使用できません。
Aiレンズ
絞りリングの16の数字がオレンジ色ではない
1977年に登場してから、1980年にAi-Sレンズにモデルチェンジするまでのもの。
基本的にはAi-Sレンズ同様に使用可能ですが、望遠レンズ時のプログラムシフトは効きません。
また自動絞り連動レバーの動作量が異なるため、露出に微妙に誤差が生じている可能性があります(瞬間絞り込み測光で補正されます)。
Ai改レンズ
非AiレンズをAi改造したレンズは、Aiレンズ同様に使用可能です。
非Aiレンズ
Nikkor AutoやNew Nikkorといった、Ai方式以前のレンズは使用できません。
ニコンFAにはAi連動レバーの可倒機構がないためです。
マニュアルフォーカスニコンの最高峰
ニコンFAは、マニュアルフォーカス時代のニコンとして最高の機能を持ったカメラ。
MFのニッコールレンズのすべての機能を引き出すことが可能です。
高機能なフィルム一眼レフカメラを中古で手に入れたい方には、ぜひおすすめしたい逸品。
1980年代ならではのボディラインもとても魅力的です。
ぜひ、ニコンFAを中古で手に入れて、多彩な機能を楽しんでみませんか?
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