CONTAX(コンタックス)T3/最後の・最高の高級コンパクトカメラ
CONTAX T3。
いまでも探し求めている人は数知れず、中古市場ではまったく値崩れしないことでも知られているカメラです。
発売されたのは2001年と、フィルムカメラが現役だった最末期。
それだけに、性能・機能・操作性など、完璧なまでにブラッシュアップされています。
そもそも、今も中古人気が高い高級コンパクトカメラのブームを生み出したのが、CONTAX TやT2、TVSシリーズといった、この京セラ・コンタックスのTシリーズ。
元祖・本家高級コンパクトカメラの最終進化系であるだけに、開発者の掛けた想いも尋常なものではなかったでしょう。
いつでも持ち歩けるコンパクトさの中に、最高の描写性能を誇るツァイスレンズを搭載。
プロカメラマンやフィルムカメラファンの間で、中古の個体が垂涎のものとなっているのは当然のことだといえます。
今回は、最後にして最高の高級コンパクトカメラ、CONTAX T3について、中古フィルムカメラ専門店サンライズカメラのスタッフが紹介しようと思います。
CONTAX T3
高級コンパクトカメラへの最後の回答。
いまなお中古人気の高い、CONTAX T3とは、いったいどんなカメラなのでしょうか?
CONTAX T3の性能・スペック
形式 | 35mm高級コンパクトカメラ |
シャッター | レンズシャッター 16秒〜1/1200秒 絞り開放時は最高速1/500秒 ロングタイムモード時は1秒〜180秒 |
レンズ | ゾナーT* 35mm F2.8 |
露出計 | 2分割外部測光 |
AE | プログラムAE 絞り優先AE |
ファインダー | 逆ガリレオ型採光式ブライトフレーム |
AF | 外光パッシブ式 マニュアルフォーカス可能 |
電池 | CR2リチウム電池(Amazon)x1 |
発売年 | 2001年 |
最後の高級コンパクト
フィルムカメラからデジタルカメラが端緒につきはじめた2001年。
京セラ・コンタックスは高級コンパクトカメラ CONTAX T3を送り出しました。
その名の通り、CONTAX T、CONTAX T2と続く高級コンパクトカメラの三代目。
ツァイスレンズの描写力と、チタン外装の高級さを兼ね備えた、まさにTシリーズのエッセンスを引き継いだカメラでした。
1990年代、カメラファンの間で一世を風靡した高級コンパクトカメラ。
リコーGRシリーズやニコン28Ti・35Ti、ミノルタTC-1など、数多くの名機が生み出された、フィルムカメラ爛熟期ならではの、もっとも良い時代だったといえるかもしれません。
CONTAX T3は、まさにそんな「高級コンパクトカメラ」のトリを飾る存在。
21世紀最初の高級コンパクトカメラにして、最後の高級コンパクトカメラとして、いまなお中古人気はやむことがありません。
CONTAX T3の特徴
フィルムカメラ最末期に、京セラ・コンタックスが持てる技術を結集したCONTAX T3。
いったい、どんな特徴をもっているのでしょうか。
まず、コンセプトそのものは前機種、CONTAX T2を引き継いでいます。
外装はチタン。
レンズはもちろんツァイス。
そして、小型でいつでも持ち運べるボディ。
街頭でのスナップショット・キャンディッドフォトに最適の道具として不足はまったくありません。
いっぽうで、各部の操作系、レンズなど、T2から変更された点も多岐に及びます。
両機種の差異については、節を分けて紹介したいと思います。
よりシンプルに研ぎ澄まされたルックス
CONTAX T3の外観を一目見ただけでわかるのが、その上質なデザイン。
見ての通り、まったく無駄な部分はありません。
ボディには同時代のカメラのようなグリップさえ存在せず、一種、工業デザインの極致ともいえるような、モダンな見た目を実現しています。
足すことも、引くこともない、必要最小限のデザイン。
まさに、コンタックスというドイツの血を受け継いだことを体現しているといえるでしょう。
さらに、ボディサイズも前機種T2よりさらに小型化。
四角く小さいボディは、カバンの中に入れて持ち運んでも、まったく邪魔になりません。
いつでも、どこでも、フィルムで最高の写真を撮ることができるツール。
高級コンパクトカメラという存在が目指していた場所へ、CONTAX T3は確実に、たどり着いていたのではないでしょうか。
CONTAX T3のレンズ
CONTAXのカメラといえば、もちろんツァイスのレンズ。
名実ともに世界最高のレンズを作り続けてきたツァイス。
CONTAX T3は、ゾナーT* 35mm F2.8(4群6枚)を搭載しています。
精密な描写と味を兼ね備えたツァイスのレンズですが、CONTAX T3のゾナーレンズは、それまでのTシリーズに比べさらに「よく写る」レンズとして定評があります。
現在も中古で人気がある最大の理由も、まさにこのレンズ性能の高さ。
京セラ・コンタックスのツァイスレンズとしては末期のものであるだけに、完成度も折り紙つきです。
後述しますが、このレンズも前機種T2から変更されており、描写にもそれぞれ特徴があります。
ピント・露出ともにオーソドックスな特性
高級コンパクトカメラの中には、ともすればピーキーすぎて使いにくい特性をもったカメラも存在してしまっていました。
露出計の特性に癖があったり、AFが独特でいまひとつレンズ性能を活かしきれなかったり……。
その点、2001年という発売年もあり、CONTAX T3は、ピント・露出ともにオーソドックスな特性を備えています。
平たくいえば、写真の歩留まりがよいカメラ、と表現できるかもしれません。
普通に撮れば、普通に写る。
すべてのカメラに求められる性能をまず実現しているため、初心者の方でも失敗を恐れずフィルムを楽しむことができますよ。
それでいて、マニュアルフォーカスや、長時間露出用のロングタイムモードといった、カメラの特性を更に引き出す機能も搭載。
高級コンパクトカメラというとマニアのためのフィルムカメラというイメージもありますが、CONTAX T3はそうではありません。
基本をしっかりと押さえたうえで、使いこなすうちに表現の幅が広がるカメラとして仕上がっているのです。
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CONTAX T3 バリエーション紹介
2001年に発売されたCONTAX T3は、T2ほどにはバリエーションは多くありません。
ただし、シルバーとチタンブラックの色の違いのほか、製造途中でマイナーチェンジが行われています。
シルバーとチタンブラック
まず、CONTAX T3のわかりやすいバリエーションとして、色があるといえるでしょう。
CONTAX T3のカラーはシルバーとチタンブラック。
シルバーは、高級コンパクトカメラらしいチタンカラーです。
いっぽうチタンブラックは精悍さを増した印象が魅力。
個体数としてはシルバーのほうが比較的多いようです。
T3とT3D
また、厳密にはCONTAX T3には、T3とT3Dという2種類が存在します。
違いはデータバックの有無。
すなわち、日付写し込み機能があるかないかの差です。
CONTAX T3が発売された2001年は、まだフィルムカメラが現役で広く使われていた時代。
それだけに、写真への日付写し込み機能への需要はまだまだあったのでしょう。
撮影するうえでその他の機能に差はありませんが、もし、CONTAX T3ならではのシンプルな外観をさらに楽しみたい場合、データバックなしの個体を選ぶのもおすすめです。
シングル(前期型)とダブル(後期型)
バリエーションはあまり多くないCONTAX T3ですが、製造途中でマイナーチェンジが行われています。
見分け方は、裏蓋を開けたときの、フィルムスプール(巻き上げ部分)の違い。
フィルムを自動で巻き上げる際に、フィルムのパーフォレーション(穴)が引っかかる部分が、前期型は1つで、後期型は2つになっているのです。
シングルの個体
ダブルの個体
前期型はシングル、後期型はダブルと呼ばれており、数少ないマイナーチェンジ箇所となっています。
フィルム装填の確実性を増すための改良のため、もし両者を選べる場合、信頼性の高い後期型のほうがおすすめできるといえるでしょう。
T3の限定品
CONTAX T3の限定品として挙げられるのが、「70周年記念モデル」です。
CONTAX T3 70周年記念モデルとは、ドイツでのコンタックスブランドの誕生から70年が経ったことを記念し、2002年に販売されたモデル。
通常モデルとの違いは、まずボディ正面右下にエンブレムが刻印されたこと。
そして、ボディ上面のブランド名刻印は、通常の「CONTAX」から、小文字の「Contax」に変更されています。
実はコンタックスというブランドは、ドイツで設計・製造が行われていた時代と、日本でヤシカ・京セラが製造していた時代では表記が異なります。
ドイツ時代のコンタックスは「Contax」であるのに対して、日本時代のコンタックスはすべて大文字の「CONTAX」へ変更されているのです。
日本製コンタックスながら小文字表記という、貴重な逸品。
中古市場ではコレクターズアイテムとなっていますが、一味違うT3として、手に入れてみるのも一興なのではないでしょうか。
T2にも60周年記念モデルが存在するため、両者を並べてみるのも乙なものです。
T3とT2 どちらを選ぶか?
現在でも中古で非常に人気が高いCONTAX Tシリーズ。
なかでも、T2とT3のどちらを選ぶのかというのは、フィルムカメラファンにとって難しい問題です。
そこで、T2からT3への改良・変更ポイントと、それぞれが優れている点について紹介します。
1:レンズの違い 38mmから35mmへ
CONTAX T2からT3への変更点で、もっとも目立つのはレンズでしょう。
どちらもレンズ名はカール・ツァイスのゾナーを名乗っていますが、焦点距離が変更されているのです。
CONTAX T2はゾナーT* 38mm F2.8(4群5枚)。
CONTAX T3はゾナーT* 35mm F2.8(4群6枚)。
レンズの構成枚数を見ればわかるとおり、両者のレンズはまったくの別物です。
焦点距離そのものだけを考えれば、T3のほうがわずかに広角で、スナップショットには向いているようにも見えますが、T2の38mmという焦点距離も歴史上、コンパクトカメラで広く使われてきたもの。
実用上、どちらが使いやすく、どちらが使いにくい、ということは言いにくいかもしれません。
それよりも、レンズが新規設計されたことで、両者の描写は大きく異なっています。
CONTAX T3のレンズは、とにかくよく写るレンズ。
レンズ自体の描写の精密性が向上しているだけでなく、カラー撮影時の発色もよりモダンなものとなっています。
もちろんT2のレンズが劣るものではないのですが、細部までの繊細な描写という点では、T3のほうがより優れているといえるのではないでしょうか。
いっぽうで、いわゆる「レンズの味」という観点からいえば、T2のレンズもけっして捨てたものではありません。
そもそもT2の時点でレンズ描写の水準は非常に高いものとなっているのです。
あえて両者を比較しようとすれば、次のように表現できるのではないでしょうか。
T3のレンズ:かっちりと写し撮る現代的高性能レンズ
T2のレンズ:モダンさの中に味わい深さを秘めたレンズ
まったく特性が異なるレンズのため、優劣というよりも、それぞれのレンズの味を楽しむという意識で撮影するのがおすすめです。
2.T3のほうが寄れる
いっぽう、レンズの面でT3がT2より大きく勝るのが最短撮影距離。
T2の最短撮影距離が0.7mだったのに対し、T3は0.35mと、ずっと寄ることができるようになりました。
撮影できるシチュエーションがぐっと増えたのは、T3ならではの大きなメリット。
コンパクトカメラながら、被写体までぐぐっと寄って、背景をぼかした写真を撮ることも十分に可能です。
3.T3はT2よりさらに小型化
高級コンパクトカメラという名の通り、小型・軽量でいつでも持ち歩けるのはTシリーズの大きなメリット。
CONTAX T3は、T2よりもさらに小型化しており、持ち運びもより便利になっています。
両者のサイズは以下の通り。
T3:105mm(幅)x63mm(高さ)x30.5mm(奥行き) 重量230g
T2:119mm(幅)x66mm(高さ)x33mm(奥行き) 重量295g
大きさ、重さともに、T3はT2よりも持ち歩きやすいカメラに仕上がっていることがわかります。
単なるサイズ上の差だけでなく、黒いグリップが存在するT2に比べ、金属外装が前面に押し出されたT3のデザインも、より小ささを強調しています。
4.AF精度の向上
CONTAX T3は、T2に比べて明らかにオートフォーカスの精度が向上しています。
これは、AF方式を変更したことによるもの。
T2では赤外線アクティブ方式を採用していたのに対し、T3のAFは外光パッシブ方式。
1990年のT2から2001年のT3という、10年あまりの間のAF技術向上も合わせ、より正確なフォーカスを実現しています。
アクティブ方式のAFとパッシブ方式のAFはそもそもの動作原理が異なるものですが、T3での変更は、T2のAF性能への不満を反映したものであると考えてよいでしょう。
T2が抱えていた問題、それがオートフォーカスの「中抜け」でした。
T2ではピントを合わせたつもりでも、現像から上がってきた写真を見ると実際にはピンぼけになってしまっていることが多かったのです。
これは、T2のAFが、カメラ本体から赤外線を発し、反射してきた赤外線を感知することで距離を測っていたため。
その点、T3ではセンサーにより光を直接計測し被写体との距離を合わせる形式へと変更されたため、AFの精度はずっと良くなりました。
CONTAX T3は、T2よりもずっと歩留まりよく撮影することができるカメラ。
この改良点は、非常に大きなものだということができるでしょう。
5.シャッター最高速度が向上
CONTAX T2ではシャッターの最高速度が1/500秒だったのに対して、T3では1/1200秒へと更に高速化されています。
T2の1/500秒もレンズシャッターのカメラとしてはオーソドックスな数値で、必要十分な性能であるともいえますが、T3では高速シャッターにより、より幅広い撮影シーンに対応することが可能となったのです。
ただし、難があるとすれば、F2.8の絞り開放時には、最高速度は1/500秒に制限されてしまいます。
ユーザーとしては、絞り開放時にこそ高速シャッターが使いたいというのが本音。
技術的に難しかったのでしょうが、少しだけ残念なポイントでもあります。
T3とT2の操作性はまったく異なる
さて、ここまでT2からT3への改良点について書いてきましたが、両者の間には、それぞれ甲乙つけがたい点も存在しています。
まず挙げるとすれば操作性。
T3とT2は、そもそもユーザーの操作性に対する考え方がまったく異なるのです。
CONTAX T2は、基本的にダイヤル操作をモットーとしたカメラでした。
絞りの変更、絞り優先AEとプログラムAEの切り替えは、レンズ外周のリングという直感的な位置。
マニュアルフォーカス時のピント合わせと、AF・MFの切り替えは右手親指でリングを回すという形で、それぞれ、一瞬で切り替えることができました。
露出やピントをマニュアルで合わせることに主眼をおいた設計であるともいえるでしょう。
CONTAX T2の操作系
いっぽう、CONTAX T3はどちらかといえば、オートでの使用性を重視した設計へ変更されているといえます。
T2ではピントダイヤルが位置していた右手親指部には、プログラムAEと、絞り優先AE時の絞り値を設定する機能が割り振られました。
ダイヤルの位置・刻印は直感的ですが、ダイヤルにロックがあるためとっさの切り替えは難しいともいえます。
CONTAX T3の操作系
T3で大きく変わったのがマニュアルフォーカスへの切り替え。
T2では一発でMFに切り替えられたのに対し、T3ではまずモードボタンでMFモードにし、モードダイヤルでピントを合わせるようになったのです。
各部が改良されたT3ですが、絞り優先AEやマニュアルフォーカスの使い心地については、T2のほうに一日の長があるといえるのではないでしょうか。
とはいえ、これらの変更は、T3においてT2の弱点が解消されたゆえのものともいえるかもしれません。
AFに弱点を抱えていたT2では、MFが使えるというよりも、MFを使わざるをえなかったというのが現実。
むしろ、プログラムAEとAFで瞬時に景色を切り取るというのが、高級コンパクトカメラ本来の、特性を活かした使い方だといえるかもしれません。
T2とT3は、同じシリーズのカメラではありますが、まったく違う機種として捉えたほうがよいでしょう。
T3とT2の質感の差
また、カメラファンの間では、T3とT2は質感が異なるとの評判です。
どちらもチタン外装の端正なデザインですが、どうやらT3よりもT2のほうが金属外装が肉厚だと噂されているのです。
T2が発売された1990年といえばほぼバブルの時代。
時代を反映し、高級素材であるチタンが存分におごられたのでしょう。
とはいえこちらについては、見た目のデザインの好みや機能面で選んでしまってもまったく問題ないと思います。
T3最大の弱点
さて最後に、T3とT2を比較した場合、T3には最大の弱点があります。
それが、中古価格が倍近く違うこと。
中古カメラ店でCONTAX T3とT2を探したときに、T3はほとんど値崩れしておらず、新品当時の定価近くで売られていることさえあるのです。
もちろん各部への改良という違いはありますが、T2とT3のどちらを選ぶかというときに、価格差が理由になることもあるかもしれません。
むしろ、それでもT3の中古が出てくるとすぐに売れてしまうという事実が、このカメラの完成度と中古人気の非常な高さを物語っているとさえいえます。
コンタックスT2についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
迷ったらぜひご覧ください。
CONTAX T3で使えるおすすめ用品
CONTAX T3では、電池はCR2リチウム電池を使用します。
CONTAX T3は高級コンパクトカメラの決定版
フィルムカメラの最末期、高級コンパクトカメラの大トリを飾ったCONTAX T3。
最高のレンズで最高の写真を、いつでも撮ることができるカメラ。
つねに側にいる相棒として、これ以上に最適な機種はないといえるでしょう。
中古市場に出てくるとすぐに売れてしまうCONTAX T3。
修理可能な業者もまだまだ存在しているので、状態がよい個体を見つけたらぜひ手に入れることをおすすめします。
CONTX T3のレビュー記事
大阪で活動中の写真家、雨樹さんによるフィルムカメラ名機散歩第8弾です。
CONTAX T3を片手にお散歩しながら素敵な写真を撮っていただきました。
ぜひご覧ください。
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