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エルマー5cm F3.5・F2.8「元祖」ライカレンズを中古で味わう!

ライカIIIfとエルマー

エルマー(Elmar)と名付けられたライカレンズがあります。
すべてのライカレンズの元祖。
そして、すべての35mmフィルムカメラ用レンズの元祖でもある存在です。

今回は、そんなエルマー5cm F3.5とF2.8について紹介します。

一般に35mmフィルムカメラの「標準レンズ」と認識されている、焦点距離50mm(5cm)のレンズ。
じつは、そうなったのは「たまたま」ライカが50mm(5cm)を標準レンズにしたからでした。

そのときに取り付けられたレンズに源流をもつのが、エルマー(Elmar)5cm F3.5というレンズだったのです。
エルマー5cm F3.5を使うのは、まさにフィルムカメラの歴史を追体験すること。
改良版の50mm F2.8と並んで、ライカレンズとしては中古価格も手ごろです。

とくにエルマー5cm F3.5は中古の玉数が多いので中古の入手も容易。
これから中古レンズを楽しんでみたいという方にもおすすめできますよ!

いったいエルマーの5cmレンズにはどんな特徴があるのかということを、今回は徹底的に解説します!

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エルマー 5cm F3.5

ライカのLマウントレンズのなかでも、とくに有名なもののひとつである、エルマー5cm F3.5(50mm F3.5)
ライカM3の登場に合わせ、F2.8のモデルも登場しています。

まずは、エルマー5cm/50mmとはどんなレンズなのか、簡単に解説します。

エルマー5cm/50mmとは

いわゆる普通のエルマー

エルマー(Elmar)とは、ライカの純正レンズの名前。

ライカの純正レンズには、それぞれ専用の名前がついています。
エルマーのほかにも、ズミクロン(Summicron)、ズミルックス(Summilux)、エルマリート(Elmarit)、ヘクトール(Hektor)などなど、バリエーションは非常に豊か。

なかでも、このエルマー(Elmar)という名称は、レンズの開放値(明るさ)がF3.5もしくはF2.8のレンズに付けられたものとなります。
ライカのレンズ名は、少数の例外を除き、基本的にレンズの開放値によって決まります。

そのため、この記事で紹介するエルマー5cm F3.5やF2.8のほかにも、90mmをはじめとする異なる焦点距離のレンズが存在しています。

エルマー5cmは35mmフィルムカメラの『基本』となったレンズ

エルマー5cm

さて、そんなエルマー(Elmar)、なかでも5cm F3.5は、35mmフィルムカメラの歴史の中で、とても重要な位置にあるレンズです。

なんといってもエルマー5cm F3.5は、世界初の実用35mmフィルムカメラに標準レンズとして取り付けられたものなのです。

1925年に正式に発売された、最初のバルナックライカ
世界初の実用的な、量産された35mmフィルムカメラです。

このバルナックライカの標準レンズは、一貫して50mm F3.5でした。
最初は固定式、途中でLマウントの交換式となりますが、交換レンズ自体の数値上の性能は変わりありません。

バルナックライカに最初からついてくる交換レンズは、いまでいえばデジタル一眼カメラの「キットレンズ」のようなもの

ライカを最初に手にした人、誰もが使うレンズとして、5cm(50mm)というレンズは、ライカの標準レンズとなったのでした。

ライカIIIfとエルマー

5cm(50mm)が標準レンズなのは偶然

では、なぜバルナックライカの標準レンズは5cm(50mm)なのでしょうか?

答えは偶然です。

ライカについて多数の研究者がリサーチを重ねましたが、決定的な答えは未だ見つかっていません。

「たまたま」「なんとなく」ちょうどいい焦点距離だったから。
それが、エルマー5cm F3.5がバルナックライカの標準レンズとなった理由です。

「標準レンズは人間の肉眼の感覚に近い」「遠近感が自然」などの意見を聞くこともありますが、決定打となりえるものではありません。

エルマーが基準となり、標準レンズ=50mmが決まった

ライカの標準レンズが5cm(50mm)ということは、他の35mmフィルムカメラにも影響を及ぼしました。

たとえば戦後のレンズ交換式一眼レフカメラでも、標準レンズは基本的に50mmとされています。

(5cmと50mmで表示が異なりますが、5cm=50mmなので、全く同じことを表しています。1960年頃を境に、それ以前はレンズの焦点距離がcmで表記されることがよくありました)

さらに、その名残は、デジタルカメラの時代となった現代にも息づいています。

いまでも、「標準レンズ」という言葉が表すのは、焦点距離50mm前後の(もしくは35mmフルサイズ換算時に画角が50mmに近い)レンズ。
これはまさに、エルマー5cm F3.5がきっかけとなった数値そのものです。

Ai AF Nikkor 50/1.4D
現代の50mm標準レンズの例(ニッコール)

さらに、いわゆる「標準ズーム」レンズも35mmフルサイズで焦点距離50mmの画角を中心としたズームレンズのことを指しています。

いまではカメラのユーザーも、それどころかカメラ・レンズを製造する技術者さえも、50mmが標準レンズという共通認識を持つようになっています

バルナックライカが生まれたときの単なる偶然。
それがきっかけとなって、バルナックライカと、そこに装着されたエルマー5cm F3.5は、それ以降のすべての人々にとっての、カメラの基準となったのです。

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エルマーを生み出した名光学技術者

赤エルマー

さて、そんなエルマーを生み出した、カメラ史に必ず登場する技術者がいます。

その名もマックス・ベレーク(Max Berek, 1886〜1949)
ポーランド生まれの光学技術者で、戦前のライカレンズの多くは、氏が手がけたものとなります。

バルナックライカの名のもととなったオスカー・バルナック(Oskar Barnack, 1879〜1936)は有名な人物ですが、実はマックス・ベレークの存在なくして、バルナックライカというカメラが完成することはありませんでした。

バルナックライカは、当時主流だった乾板やロールフィルムに比べ非常に小さなフィルムを用いたカメラ。
他のカメラ用のレンズのように、悪くいえば「おおざっぱ」なレンズを取り付けたら、ボケボケの写真しか撮ることができません。

そこで、マックス・ベレークは小さな画面でも高画質で撮影できる、高解像力のレンズを設計。
それがエルマーとして結実したのです。

バルナックライカは、オスカー・バルナックとマックス・ベレークの二人三脚で生み出されたカメラと言っても過言ではないでしょう。

エルマーの名称の由来

さて、そんなエルマー(Elmar)というレンズの名前も、マックス・ベレークの名前と縁があります

後述しますが、エルマーには前身となったレンズがありました。
その名もエルマックス(Elmax)
Elmaxとは、ライカの製造元であるErnst Leitz(エルンスト・ライツ)の頭文字と、レンズ設計者のファーストネーム「Max」を組み合わせた名称。

Elmaxは3群5枚だったのですが、3群4枚になるときに、Elmarへと改称されます。
一見してElmaxとElmarは関連性のある名称。
モデルチェンジ前の名前を意識して名付けられたに違いないでしょう。

なおElmarはドイツの古典的な男性名でもあります。
さらに、エルマー以前から、例えばツァイスのテッサー(Tessar)のようにレンズには「R」で終わる名前を付けることが広く行われていました。

ElmaxからElmarへの名称変更は、ドイツ語として語感がスムースだったことも理由のひとつとなったのではないでしょうか。

余談ですが、「エルマー」という単語から、アメリカの児童文学「エルマーとりゅう」を連想する方もいるかもしれません。
しかし、レンズ名がElmarなのに対して、エルマーとりゅうの主人公はElmer。
そのため、関係はありません

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エルマー5cm/50mmレンズの魅力

それでは、エルマーの5cmや50mmのレンズを中古にはどんな魅力があるのでしょうか?

古典的レンズながら切れ味鋭い描写

エルマーの前玉

戦前のエルマーはすでに製造から80年以上を経ています。

感動的なのは、そんな古いレンズにもかかわらず非常に切れ味鋭い解像力を備えていること。

カチリとはまったときには、立体感・質感を兼ね備えた深みある描写を見せてくれますよ。

エルマーのカラーネガ作例

ボディ:ライカIIIf
フィルム:フジ業務用100

エルマー作例

エルマー作例

ノンコートやモノコートなので逆光には弱いし、色合いもクラシック。
しかしそのことは、オールドレンズを使う上では十分に魅力の範疇だといえます。

エルマー作例

エルマーのモノクロネガ作例

モノクロでの撮影は、美麗の一言。

エルマーは3群4枚という、テッサーと同じレンズ構成。
(厳密には絞り羽根の位置がテッサーとは異なる)

各種収差をもっともシンプルに補正できるレンズ構成であることが、その描写力の秘密です。

世の中にはテッサータイプのレンズはたくさんありますが、エルマーはやはり本家ライカレンズだけあって、撮影したときのみずみずしさが違います。

ミラーレス一眼カメラでの作例

ミラーレス一眼カメラに取り付けるとこんな感じです。

エルマー作例

エルマー50/3.5作例

撮影:雨樹一期

他の作例はこちらの記事でも紹介しています。

[オールドレンズ撮り比べ5] Leitz Elmar 5cm F3.5で目の前の景色を切り取ろう!

エルマー5cm F3.5はこちらのマウントアダプターでミラーレス一眼カメラに取り付けられます。

沈胴させてフラットに

エルマー5cm F3.5や50mm F2.8といったレンズは、すべて沈胴レンズです。

沈胴レンズとは、手動で鏡筒をカメラボディ内に収納できるレンズのこと。

赤エルマー

エルマー本来の組み合わせであるバルナックライカに取り付けると、レンズ沈胴時には、ほとんどフラットな状態になります。

最初の35mmフィルムカメラはここまでコンパクトだったのかと驚くに違いありません。

ライカIIIfとエルマー

※ただし、マウントアダプターでミラーレス一眼カメラに取り付ける場合、絶対に沈胴させてはいけません。
内部の撮像素子(イメージセンサー)にぶつかって、故障の原因となります。

35mmフィルムカメラの「元祖」を楽しめる

エルマーを使う楽しみは、歴史を味わうことでもあります。

エルマーはすべての35mmフィルムカメラ用レンズの元祖ともいえる存在。
すべてのスタート地点のレンズなのです。

さらに、後述するようにエルマーには多くのバリエーションがあり、同じエルマーでも描写の違いを楽しむことができますよ。

中古では安価で手に入れやすいエルマーですが、実は非常に奥深いレンズ。

ぜひ深遠なるライカ中古レンズの世界に、エルマーで入門してみませんか?

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エルマー(Elmar)5cm/50mmレンズ 各形態解説

ライカIA新エルマー
ライカIAと新エルマー

エルマー5cm F3.5というレンズの歴史は、まさにバルナックライカの歴史そのものにほかなりません。

鏡筒の素材やコーティング。
さらに、初期のものは根本的に設計が異なることでも知られています。

ここではエルマー5cmレンズについて、各種類を解説したいと思います。

1.ライツ・アナスチグマット(Leitz Anastigmat)5cm F3.5

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レンズ構成 3群5枚
着脱 固定式
絞り 大陸系列
年代 1923年
1925年

バルナックライカのレンズについて語る場合、エルマー以前から始めなくてはなりません。

一番最初のバルナックライカのレンズ。
それが、ライツ・アナスチグマット(Leitz Anastigmat)5cm F3.5です。

このレンズが取り付けられたのは、試作ライカであるライカ0(Null Leica)

1925年に発売された初期のライカI型(A型)にも、初期の250台程度には、このレンズが使用されています。

非常に希少で、中古で出てきたら安くても数百万円以上はくだらないコレクターズアイテムです。

ボディには固定式。
特徴として、レンズ構成が3群5枚と、その後のエルマーとは異なることが挙げられます。

具体的には、3群のうち後群が3枚貼り合わせとなっているのです。
(その後の3群4枚のエルマーは、後群が2枚貼り合わせ)

※なお、『写真工業別冊 ライカの歴史』 p14にはライカ0型のライツ・アナスチグマットは3群4枚と記載されています。
※ライツ・アナスチグマット(Leitz Anastigmat)5cm F3.5には、2001年登場の復刻版があります。

2.エルマックス(Elmax)5cm F3.5

noimage

レンズ構成 3群5枚
着脱 固定式
絞り 大陸系列
年代 1925年

最初のバルナックライカ、ライカI型(A型)に取り付けられたレンズで、上記のライツ・アナスチグマットからすぐに世代交代したものです。

内容的にはライツ・アナスチグマットの名前を変えただけで、レンズ構成も同じ3群5枚です。
ボディへは固定式。

エルマックス(Elmax)という名称は、社名であるErnst Leitzの「EL」と、レンズ設計者のマックス・ベレーク(Max Berek)の「MAX」を組み合わせた名前。

名称のうえでは、エルマーの源流となったレンズであるといえます。
こちらも800台程度しか存在しないため、中古は希少中の希少な存在です。

3.旧エルマー(Elmar)5cm F3.5

noimage

レンズ構成 3群4枚
着脱 固定式
※ライカLマウントに改造されたものが存在
絞り 大陸系列
年代 1926年

旧エルマー5cm F3.5
エルマーという名称のレンズはここに始まり、以後30年にわたって、バルナックライカの標準レンズとして親しまれていくこととなります。

しかしながら、この最初期のエルマー5cm F3.5は、わざわざ「旧エルマー」と呼ばれているだけあって、それ以降のエルマーとは異なる存在です。

ElmaxからElmarへの変更により、後玉が3枚貼り合わせから2枚貼り合わせとなり、構造の簡略化を実現しました。
それにあたっては、少ない枚数で高性能を実現するために、ドイツの名門光学メーカー、ゲルツ社(C.P.Görz)の硝材を使用。

ところが。
肝心のゲルツ社は、エルマーの登場後ほどなくして、ライカの製造元にとってライバルであるカール・ツァイス(Carl Zeiss)に合併されてしまったのです。

ライバル企業からガラスを供給してもらうわけにもいかず、エルマー5cm F3.5はいわゆる「新エルマー」へと移行することとなります。

結局のところ、この旧エルマーは1万本程度しか存在しないものとなりました。

非常に良質なガラス素材を使っていることもあり、当時の写真愛好家の間では、旧エルマーのほうが新エルマーより性能が良かったと言われていたとのこと。

後述しますが、この旧エルマーは基本的にはライカI型(A型)に固定されたレンズでしたが、ライカLマウントへ改造されたものが存在しています。

4.新エルマー(Elmar)5cm F3.5

ライカIA新エルマー

レンズ構成 3群4枚
着脱 固定式
※ライカLマウントに改造されたものが存在
絞り 大陸系列
年代 1928年

ゲルツ社から硝材の供給を受けられなくなったエルンスト・ライツ社は、同じくドイツの名門ガラスメーカーであるショット社(Schott AG)のガラスを用い、いわゆる新エルマーを製造するようになりました。

基本的に、以後のエルマーはこの流れを元に製造されていくこととなります。

ライカIA新エルマー

ただし、この時点では新エルマーもまだライカI型(A型)に固定された状態。
実は、固定された新エルマーは、レンズ交換式となったLマウントのエルマー5cm F3.5よりも微妙に焦点距離が短く、厳密には異なるレンズです。

ライカIA新エルマー

この新エルマーも、旧エルマー同様、Lマウントへ交換された個体が存在しています。

以下で詳しく紹介します。

ショートエルマー:Lマウントに改造された固定式レンズ

「旧エルマー」5cm F3.5と「新エルマー」5cm F3.5は、本来はライカI型(A型)に固定されたレンズでした。

しかしながら、旧エルマー、新エルマー、ともに相当数がライカLマウントの交換レンズへ改造されています

その理由は、当時、ライカの純正改造が行われていたため。

ライカに改良が加えられると、ライカI型(C型)以降、レンズの交換ができるようになりました。
いっぽう、ライカの製造元のエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)は、古いバルナックライカを最新機種並みの機能へアップデートする改造を受け付けていました。
そのなかで、ライカI型(A型)と固定されたエルマーレンズを、Lマウントの交換式に改造するサービスも行っていたのです。

ただし、固定式から改造されたレンズは、旧エルマー・新エルマーともに、その後のLマウントレンズとは微妙に異なる存在。

愛好家からは「ショートエルマー」と通称されています。

上述したように、Lマウントのエルマーに比べ、旧エルマー・新エルマーともに、実焦点距離が短くなっています。
(公称値はすべて5cm)

Lマウントに改造されたショートエルマーは、ピントリングの指掛けの裏に数字が刻印されており、それにより以下の3種類に分類できます。

刻印 焦点距離
0 50.5mm
1 49.6mm
3 48.6mm
それ以降 51.6mm

ショートエルマーは、何も知らない人からしたら他のLマウントエルマーとほとんど同じですが、見る人が見ればとても希少なコレクターズアイテム。
とくに、「旧エルマー」はそのなかでも更に珍重されています。

普通のLマウントエルマー50mm F3.5が3〜4万円で手に入ることが普通なのに対して、10万円単位の値段が付く場合も。
もし見つけたら、ぜひ手に入れてみましょう。

(ちなみに、上述したElmaxにもLマウントに改造されたものが存在し、それは環を掛けて貴重です。銘板がエルマーへ交換されてしまっているので判別がとても難しく、完全にマニアの世界となります)

近接エルマー

また、旧エルマー・新エルマーともに、「近接エルマー」というものも存在。

これは、レンズエレメント自体はそのままに、最短撮影距離を通常の1mから0.45mへと縮めたものとなります。

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5.ニッケルエルマー(Elmar)5cm F3.5

noimage

■外観の参考:ニッケル外装のヘクトール(Hektor)5cm F2.5

ヘクトール5cm F2.5

ヘクトール5cm F2.5

レンズ構成 3群4枚
着脱 ライカLマウント
絞り 大陸系列
年代 1930年

1930年、ついにレンズ交換式のライカI型(C型)が登場します。

これに伴い、エルマー5cm F3.5レンズもLマウントの交換式になりました。
また、このレンズから焦点距離の実測値は51.6mmに統一されます。

ただし初期のライカICは、フランジバックが統一されておらず、そのボディ専用の特定の交換レンズしか取り付けることができませんでした。

この時代のエルマーは「ニッケルエルマー」と通称されています。
理由は「ニッケルメッキが施されている」からです。

ニッケルエルマーは、その後のエルマー5cm F3.5とは、各部の構造も微妙に異なります。

とくに目立つのが、ピントリング(ヘリコイド)の回転量

初期と中期のニッケルエルマーは、無限遠から最短距離までの間で1回転。
いっぽう、後期型のニッケルエルマーと、クロームメッキのエルマーは、無限から最短で半回転しかしません。

この特徴があるため、バルナックライカ以外のレンジファインダーカメラに取り付けたり、マウントアダプターでミラーレス一眼で使うときには、干渉しないかチェックが必要です。

ニッケルエルマーの前期・中期・後期は以下のように刻印でも見分けられます。

前期型:無限遠ロックなし・ピントリング全回転・指掛けの裏の刻印が4。
中期型:無限遠ロックあり・ピントリング全回転・指掛けの裏の刻印が5。
後期型:無限遠ロックあり・ピントリング全回転・指掛けの裏の刻印が6。

刻印6の途中から、外装のメッキがクロームとなります。

6.エルマー(Elmar)5cm F3.5

いわゆる普通のエルマー

レンズ構成 3群4枚
着脱 ライカLマウント
絞り 大陸系列・倍数系列
年代 1933年頃〜

1933年頃から、ライカのカメラボディの仕上げが、それまでのブラックペイントからクロームメッキに変更されます。

それに伴い、エルマー5cm F3.5も、外装がニッケルからクロームに変更されます。

普通のエルマー

この仕様のエルマー5cm F3.5は、戦前から戦後にかけて非常に大量に製造されました。
そのため、現在、中古ライカレンズとしてもっとも手軽に手に入るものとなっています。

中古価格はとても安価で、3万円程度から。
状態が悪ければ2万円台もありえます。

普通のエルマー
後玉(上記画像はL-Mリング装着状態)

エルマーのコーティング・絞りの変更

さて、このエルマー5cm F3.5は、戦後すぐの1946年から、レンズコーティングが施されるようになります。

この時代のものということもあり当然モノコートですが、ノンコートとはまた異なるヌケのよい描写が味わえます。

また、それとほぼ同時に、絞りの数値も変更されています。
上で紹介してきたレンズは、絞りが「大陸系列」という数字になっていました。
具体的には、F3.5〜F4.5〜F6.3〜F9〜F12.5〜F18です。

この時期に改良されたものからは、現在一般的に使われているのと同じ「倍数系列」(国際系列とも)になりました。
F3.5〜F4〜F5.6〜F8〜F11〜F16〜F22という表示になり、今の目から見ると直感的な操作が可能となっています。

ライカIIIfとエルマー
大陸系列の例

エルマー5cm
倍数系列の例

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7.赤エルマー

赤エルマー

レンズ構成 3群4枚
着脱 ライカLマウント
絞り 倍数系列
年代 1950年頃〜

Lマウントのエルマー5cm F3.5の最終型。

それがこの、いわゆる「赤エルマー」です。

赤エルマーとは、ライカIIIfの登場に前後して登場した改良モデルのこと。

最終形態として改良が重ねられているのでポテンシャルが高く、さまざまなエルマー5cm F3.5のなかでも、とくに描写が優れていると、中古カメラ愛好家の間で評判です。

ライカレンズの元祖としての味と、戦後の改良による性能向上がうまくバランス。
Lマウントレンズの最高傑作と呼んでも差し支えないレンズに仕上がっています。

赤エルマーはそれまでのエルマーとは構造・見た目も異なります。
わかりやすいのがレンズ根本。
それ以前のエルマーはマウント面側に距離指標が、鏡筒側に被写界深度目盛りがありますが、赤エルマーではその配置が逆転しています。

赤エルマー

とくに人気の高い「ダイヤマーク」入り赤エルマー

さらに赤エルマーのなかでも特に人気が高いモデルが存在します。

それがいわゆる「ダイヤマーク」入り

レンズ根本の中心上部に、ピントの位置を示す刻印が施されています。
多くの赤エルマーはこの刻印が三角形なのですが、なかには菱形のものが存在します。

菱形の印のレンズは「ダイヤマーク」入りと呼ばれ、とくに描写がよいと中古で珍重されているのです。

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8.エルマー5cm F2.8

エルマー50mm F2.8(最短1m)

レンズ構成 3群4枚
着脱 ライカMマウント
ライカLマウント
絞り 倍数系列
年代 1954年

1954年、最初のM型ライカであるライカM3に合わせて登場したレンズです。

ライカM3の登場に合わせて改良され、それまで伝統だった開放値F3.5から、F2.8へと半段明るくなりました
新種のランタンガラスを用いることにより、同じ3群4枚というレンズ構成のままでの改良を実現しています。

エルマー50mm F2.8(最短1m)

MマウントのほかLマウントも存在。

エルマー5cm F2.8 L
Lマウント版

エルマー5cm F2.8 L
Lマウント版

やはりエルマー5cm F2.8のMマウントはライカM3が、LマウントはライカIIIgがもっとも似合うのではないでしょうか。

1961年に製造が中止され、バルナックライカの最初から続いてきた、エルマー5cm(50mm)というレンズはここで一旦途切れることとなります。

9.エルマーM 50mm F2.8

エルマー50mm F2.8(最短0.7m)

レンズ構成 3群4枚
着脱 ライカMマウント
絞り 倍数系列
年代 1994年

1994年。
長らく途切れていたエルマー50mmというレンズが復活しました。
しかも、沈胴式鏡筒として。

上で紹介してきたエルマー5cm F3.5や5cm F2.8は基本的に沈胴。
しかし、1950年代後半以降、ライカは一旦沈胴レンズをやめてしまっていました。

このエルマーM 50mm F2.8では、モダンな外観ながらクラシックな沈胴機構を復活。
もちろん描写は現代ライカレンズならではの最高級のものです。

エルマーM 50/2.8

伝統を受け継いだ最新のエルマー。
それが、エルマーM 50mm F2.8なのです。

エルマー50mm F2.8(最短0.7m)

エルマーで使いたいアクセサリ

さて、このようにさまざまな種類が存在するエルマーですが、Lマウントのエルマー5cm F3.5には共通した特徴があります。

まず、「絞りリングが回しにくい」ということ。

次に、フィルターをどうやって取り付けるかということです。

専用フード

赤エルマーと専用フード

エルマー5cm F3.5の絞りリングはレンズ前面に位置しており、しかも少し重めのものも存在するので、少々操作しにくいです。

そんなときは、専用フードとアクセサリーを使用することで、操作を改善することができますよ。

方法は2つ。

まず、フード「FISON」と絞りリング「VOOLA」を併用するということ。

 FISION

この場合、絞りの値を変えたいときにはフードのネジを緩めて回転させる方法になります。

次に、フードと、絞りリングへの連動部が一体となったアクセサリー「VALOO」を使用すること。
こちらは先端部にダイヤルがあり、そのまま操作可能。
ただし、絞りが倍数系列のエルマーにしか取り付けることができません。

どちらもエルマー5cm F3.5での撮影をより楽しむことができるアクセサリー。
ぜひ中古で一緒に手に入れるのがおすすめです。

エルマー5cm F3.5のフィルター

エルマー5cm F3.5は歴史的価値の高いオールドレンズだけに、保護フィルターを取り付けたいと思う方も多いはず。

しかし、レンズ外周にある39mmのフィルター枠に保護フィルターを取り付けたら、絞りリングが回せなくなってしまいます。

じつはエルマー5cm F3.5には、レンズ中心・前玉周囲にも小さなフィルター枠ネジが切られています。
こちらはフィルター径19mm。
非常に小型で特殊なサイズですが、エルマー5cm F3.5は中古でとても人気が高いレンズのため、19mmフィルターは簡単に購入可能です。
国内のフィルターメーカーが専用品を製造しています。

エルマー5cmに対応するマウントアダプター

エルマー5cm(50mm)をミラーレス一眼カメラに取り付ける場合、L39マウント(ライカスクリューマウント)はこちらのものが。

Mマウントはこちらのものがおすすめです。

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エルマー5cm/50mm購入時の注意

さて、最後に、エルマーを購入するときの注意点について記します。

1.状態は千差万別

エルマー、とくにLマウントの5cm F3.5はとても古いレンズのため、中古の状態は千差万別です。

クモリなどが生じている個体も混じっています。

それもまた味とする向きもありますが、状態がよいレンズが欲しい場合には、いくつかの中古を見比べるのもおすすめです。

2.偽物に気をつける

さて、エルマーをこれから購入する、初心者の方にとってとても大切なこと。

それが、「エルマーの偽物に気をつける」ということです。

エルマー5cm F3.5には、見た目が非常に似たレンズが存在しています。
(具体的には、ロシア製の「インダスター」や「フェド」の50mm F3.5が該当します)

これらのレンズの銘板だけを差し替えて、あたかもライカのエルマー5cm F3.5のように見せかけた偽物があるので注意が必要。

ロシア製フェイクライカ
エルマーと刻印されたロシア製フェイクライカ。
当然、こんなに露骨な偽物ばかりではなく、巧妙なものも多い。

偽物が存在するのは、インダスターやフェドが数千円台前半で手に入るのに対し、見た目がほとんど同じエルマーが安くても数万円するため。
知識がないと見分けるのが難しいと思うかもしれませんが、実際に本物と偽物を並べてみると、仕上げの良さや精度がまったく異なります。

また、信頼のおける中古カメラ店ならば基本的に、ロシア製改造の偽物をエルマーと偽って売ることはないので安心しましょう。

ただし、ロシアレンズ自体はけっして性能の悪いものではありません。
製造数が多すぎて値段がつかないだけ。
もし興味があったら、以下の記事で紹介するロシアレンズを楽しんでみるのもおすすめです。

旧ソ連製おすすめオールドレンズ・中古レンズの魅力とは?

フィルムカメラもデジカメ・レンズも最高値の買取を約束します!

元祖ライカレンズ・エルマー5cm F3.5でオールドレンズを楽しもう!

多彩な種類が存在する、エルマー5cm(50mm)。

マニア人気の高い初期のモデルから、入手しやすくオールドレンズ入門に向いている、1930〜50年代のモデルまで、バリエーションは非常に豊富。

なんといっても、元祖35mmフィルムカメラ用レンズであることが魅力です。

ぜひあなたも、エルマー5cm F3.5を中古で手に入れてオールドレンズの味わいを楽しみませんか?

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著者紹介: サンライズカメラ

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