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旧ソ連製おすすめオールドレンズ・中古レンズの魅力とは?

FED2 Industar-61

これから中古のオールドレンズを手に入れるとき、ぜひ検討してみたいのが旧ソ連製のレンズ。
旧ソ連で製造された中古レンズは値段も安価で入手も容易。
それでいて性能が良いものが多いので、初めてオールドレンズを使うという方から、さまざまな中古レンズを試してみたいというマニアックな方まで、幅広く満足することができるでしょう。

旧ソ連で作られたレンズは、歴史的経緯からドイツ製レンズの描写を受け継いでいます。
旧ソ連製レンズのルーツは、ツァイスをはじめとするドイツの名門光学機器メーカー。
その陰には、戦争に翻弄された歴史がありました。

もちろん一方で、旧ソ連製レンズには独自に設計された魅力ある名玉・迷玉も満載。

今回は、フィルムカメラで、そしてミラーレス一眼やデジタル一眼レフで使ってみたい、旧ソ連製中古オールドレンズの魅力について迫りたいと思います。

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ぜひ使ってみたい旧ソ連製レンズ2選

まず最初に、旧ソ連製のレンズを初めて購入したいけれど、どれがいいのかわからない!という方のために、おすすめのレンズを2つ紹介します!

どちらも旧ソ連のレンズ入門にうってつけなので、ぜひ最初はこれらの中古レンズから入門してみましょう!

おすすめ1:Jupiter-8 50mm F2

Jupiter-8 5cm F2 L39 1955

まず、中古旧ソ連製レンズのなかでももっともおすすめしたい逸品。

それが「Jupiter-8 50mm F2」(ジュピター8/ユピテル8)です。

Jupiter-8の特徴。
それは、戦前にカールツァイスがコンタックス(Contax)のレンジファインダーカメラ用に開発した、ゾナー50mm F2(Sonnar 50mm F2)の完全なデッドコピーだということ。

ツァイスのレンズがなぜ旧ソ連で作られたのか、その経緯については後述しますが、「本物の」ツァイスのレンズが非常に安価に使えるのはとても魅力的。
ツァイスコピーの中古旧ソ連製レンズのなかでも、50mm F2と標準的スペックなので使いやすいのもおすすめポイントです。

Jupiter-8作例

Jupiter-8 50mm F2ならこんな写真が撮れますよ。

Jupiter-8作例

Jupiter-8 作例

撮影:雨樹一期

作例記事はこちら

【オールドレンズ探訪記】Jupiter-8 5cm F2 1955年製の実力とは!?(作例・撮影Tipsあり)

Jupiter-8の選び方

レンズマウントにはライカLマウントとコンタックスマウント(キエフ用)がありますが、対応カメラが多く使いやすいのはライカLマウントの方。
マウントアダプターも、コンタックスマウント用のものはマイナーで高価なので、Lマウントを選ぶのが無難です。

おすすめ2:Jupiter-12 35mm F2.8

JUPITER-12(ジュピター12) 35mm F2.8 ブラック

こちらのJupiter-12 35mm F2.8も、中古の旧ソ連製レンズとして代表的なもののひとつ。

こちらも、同じくJupiter(ジュピター/ユピテル)の名前がついていることからわかるとおり、ツァイスに源流を持つレンズとなります。

元となったのはツァイスのビオゴン(Biogon)。
ただし完全なるデッドコピーではなく、構造を多少簡略化するなど改良が加えられているようです。

このレンズの魅力。
それがレンズの後玉が大きく張り出す独特のルックスを持つ、対称型広角レンズだということ。

このJupiter-12は、対称型広角レンズのなかでももっとも安価かつ手軽に中古で楽しめるもののひとつだといえるでしょう。

35mmという少し広めのレンズで、対称型ならではの歪みのない描写を味わう。
使いやすい画角のおすすめオールドレンズです。

こちらもコンタックスマウントとライカLマウントがあり、Lマウントのほうがおすすめです。

中古で楽しみたいおすすめ旧ソ連製レンズ

旧ソ連で作られたレンズたち。
中古は安価ながら描写の実力が非常に高く、カメラファンの間で人気がとても高いレンズたちです。

いったい、旧ソ連製のレンズとはどんなものなのでしょうか?

旧ソ連製のレンズとは

Jupiter-9

そもそも旧ソ連で作られたレンズとはどんなレンズなのでしょうか?

旧ソ連製のレンズ、俗にロシアレンズとも呼ばれるのは、旧ソ連時代に作られたレンズと、その流れを引いてソ連崩壊後にもロシアや、旧ソ連から独立した各国で作り続けられたレンズのこと。

旧ソ連では、戦前から自国産カメラ・レンズの制作を試みていました。
バルナックライカのコピーであるフェド(FED)などが有名です。

ですが、そんな旧ソ連製レンズの実質的な始まりは戦後になってからといって間違いないでしょう。

第二次世界大戦で連合国の一員として勝利を手にした旧ソ連。
ドイツに進駐した旧ソ連は、戦利品として、ドイツ国内からカール・ツァイス(ツァイス・イコン)の製造設備を自国に持ち帰るのです。
その際、ツァイスの技術者も自国に連れていき、技術指導も行わせました(ツァイスの技術者はその後東ドイツに帰国できたといわれています)。

それ以降、旧ソ連ではツァイスのレンズをコピーしたレンズが大量に生産されることとなりました

単に設計をコピーしたというだけではありません。
「本物の」ツァイスの設備で、ツァイスの技術者が指導して作り始めたレンズなのです。

それゆえ、旧ソ連のオールドレンズには、戦前のツァイスの描写がそのまま受け継がれています。

いっぽうで、旧共産圏のレンズということで長期間に渡り大量生産されたことから、中古価格は非常に安価です。

Jupiter-9

ツァイスに由来する描写が安価に味わえる。
それこそが、旧ソ連レンズ、最大の魅力だといえるでしょう。

中古カメラファンに人気の高い旧ソ連製レンズ

FED

旧ソ連のカメラ・レンズは、1980年代以前の冷戦時代には「鉄のカーテン」にはばまれて、その情報は西側諸国ではあまり知られていませんでした。

※ただし、実物に触れるのは難しくても雑誌等で紹介されたり、日本へは明貿産業(メイボーオプテル)により輸入されたりもしてはいました。

ところが、冷戦終結、旧ソ連崩壊により、一挙に東側の製品が西側でも手に入るようになります

それまで幻の逸品だった、東側のカメラやレンズ。

初めて東側のレンズを手にしたカメラファンは驚きました。

レンズの外装の作りこそよくないものの、その描写力は非常にハイレベルだったのです。

旧ソ連製オールドレンズは、一挙にカメラファンの間で市民権を得ることになります。

レンズだけでなく、旧ソ連のレンジファンダーカメラも「コピーライカ」「偽ライカ」(偽ライカという名称は、けっしてネガティブなものではなく、写真家の田中長徳なども用いている呼び名です)として、カメラファンに愛される存在になっていきました。

いまでも旧ソ連製のレンズは、安価かつ高性能な存在として、オールドレンズやマウントアダプター、レンジファインダーカメラのユーザーに愛され続けています。

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旧ソ連製レンズのレンズマウント

さて、そんな旧ソ連製のレンズには、主に使われるマウントがいくつか存在しています。

ライカスクリューマウント(L39マウント)

FED2
ライカスクリューマウントのレンズ交換式レンジファインダー機、FED2

旧ソ連製レンズのなかでも玉数が多いのが、ライカL39マウントのもの。

これは、旧ソ連のレンジファインダーカメラがバルナックライカ同様のL39スクリューマウントを採用したことに由来しています。

基本的にバルナックライカのL39マウントと完全に互換性があり、距離計も問題なく連動します。

Lマウントのレンジファインダー用レンズは、ライカレンズが高価なのはもちろん国産でも高めなのが普通。
いっぽうで旧ソ連製レンズはそれらに比べると安価なのが魅力だといえるでしょう。

コンタックス(キエフ)マウント

Kiev 4a
コンタックスコピー・キエフ4a

ツァイス・イコンのレンズ交換式レンジファインダーカメラ、Contaxで採用されたのと同じマウントです。

これは第二次大戦後、旧ソ連がドイツからContaxの設備を移転し、コピーカメラのキエフ(Kiev)を製造したことに由来しています。

そのため、ContaxとKievはレンズマウントに互換性があります

またニコンのレンジファインダーカメラにも取り付け自体は可能ですが、距離計の精度が厳密には出なくなってしまいます。

このコンタックス(キエフ)マウントのレンズは人気が低く中古は安め。
ただしその代わり、マウントアダプターは高価です。

M42スクリューマウント

ZENIT
旧ソ連の一眼レフカメラ、ZENIT

旧ソ連の一眼レフカメラで用いられた最も一般的なマウントが、M42スクリューマウントです。

基本的には国産のペンタックスなどのカメラと完全に互換性があります。

絞りについては自動絞りのもののほかプリセット絞り(絞りを手動で合わせ、絞り込む)も多いです。

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旧ソ連製レンズ おすすめの使い方

では、具体的には中古の旧ソ連製レンズはどのように楽しめるのでしょうか?

1.フィルムカメラで楽しむ

中古フィルムカメラ専門店、サンライズカメラとしてぜひおすすめしたいのが、中古フィルムカメラに合わせて楽しむということ。

とくにレンジファインダー用のLマウントレンズは、バルナックライカやフォクトレンダー BESSA系、Canonなどのボディと組み合わせることで、非常に安価にレンジファインダーカメラへ入門することができますよ。
もちろん、状態さえよければZorkiやFEDといった旧ソ連製のボディを実用することも。

ベッサR

いっぽう、キエフのボディを手に入れて、レンジファインダーコンタックスの息吹を感じるのも乙なものです。

2.マウントアダプターで楽しむ

SONY α7

もともと中古カメラファンの間で人気が高かった旧ソ連製レンズですが、ミラーレス一眼の登場でより人気が深まることとなりました。

フルサイズのミラーレス一眼カメラで味わうのももちろんおすすめです。

その場合、マウントアダプターが手に入れやすく安価なのは、L39マウントとM42マウントです。

また、Jupiter-12 35mm F2.8などL39マウント用よりキエフマウント用のほうがずっと安い外爪レンズについては、キエフマウント(コンタックスマウント)用のマウントアダプターも選択肢に入ってくるのではないかと思います。

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おすすめの旧ソ連製中古レンズ9選

さて、それではここから、具体的にこれからぜひ使ってみたいおすすめの旧ソ連製レンズ(俗にいうロシアレンズ)について紹介していきます!

旧ソ連製レンズは中古も安価で、性能も非常に良好。
ここでおすすめするレンズを中古で選べば、きっとオールドレンズならではの描写に魅せられることでしょう!

1.Jupiter-8 50mm F2

Jupiter-8 5cm F2 L39 1955

まず最初におすすめするのがJupiter-8 50mm F2(ジュピター/ユピテル)
この記事の最初でも紹介したように、旧ソ連製レンズの名玉のなかでももっとも有名なもののひとつです。

カール・ツァイスのゾナー(Sonnar)50mm F2のコピーとして知られるこのレンズ。
そもそもは、第二次大戦後にツァイス・イコンのContaxレンジファインダー用の製造設備を旧ソ連国内へ移転、技術者を旧ソ連国内へ連行し、生産を始めたことに由来しています。

そのため、戦後すぐ、1940年代のコンタックスコピーの「キエフ」(Kiev)は中身がコンタックスそのものだといわれており、レンズについても同様です。

Juipter-8 5cm F2 L39 1955

さて、そのようにしてコンタックス・キエフマウントに始まったJupiter-8 50mm F2ですが、レンズ構成はそのままに、ライカスクリューマウント互換のL39マウントにコンバートされ、そちらでも製造されれるようになります。

旧ソ連のライカL39マウントのカメラというと、「フェド」(Fed)と「ゾルキー」(Zorki)が有名ですが、どちらかというと、高機能な高級機であるゾルキーとセットで販売されることが多かったようです。

このように、コンタックス・キエフマウントとライカLマウント用の双方があるJupiter-8 50mm F2ですが、使用するにあたってはもちろん、ライカLマウントのほうがつぶしが利いておすすめです。

ジュピター8 白

いっぽうでコンタックスマウントは、カメラ本体のほうの対応さえ問題なければ、Lマウント用よりも中古はずっと安価に入手可能となります。

Jupiter-8の描写は、基本的に柔らかめという定評があります。
とはいえボケボケというわけでもなく、あくまでも芯があって、それでいて柔らかく見えるというのが、さすがツァイスにルーツを持つレンズというところ。

Jupiter-8は製造期間が非常に長く、前期のものは銀色の鏡筒、後期は黒鏡筒になります。

Jupiter-8

Jupiter-8
後期型・黒鏡筒のJupiter-8(ボディは国産ライカコピーのレオタックス)

他の旧ソ連製レンズ同様、作りが良いのは古い時代のものとなります。
設計の古いレンジファインダー用レンズということもあり、絞り羽根枚数が多いのも魅力を高めます。

ちなみにJupitarとは、そのまま「木星」の意味です。

関連記事・作例

以下の記事でJupiter-8についての詳しい紹介・作例を掲載しています。
ぜひ併せてご覧ください。

オールドレンズ入門に最適な旧ソ連製レンズ「ジュピター」(Jupiter)まとめ

2.Jupiter-9 85mm F2

Jupiter-9
M42マウントの一眼レフ用Jupiter-9

85mmの明るい中望遠。
それはポートレートレンズの王道。

しかしながら、85mmのレンズは新品・中古とも高価なのが普通でした。

そんなときは、高い描写力と安価な価格を兼ね備えたJupiter-9 85mm F2を使ってみてはいかがでしょうか。

Jupiter-9 85mm F2は、上述したJupiter-8 50mm F2同様、ツァイスのゾナーをコピーした中望遠レンズ。
具体的には、ゾナー(Sonnar)85mm F2のデッドコピーとなります。

Jupiter-9

このレンズ、とにかく非常によく写ります。
もちろん、性能だけ見ればオールドレンズであることは明白かもしれません。
開放は少し甘め。
ですが、描写に不満を感じるものではなく、それも味として受け入れられる範囲です。
少し絞ればカチッとした描写になるのは、時代を考えるとさすがなもの。

Jupiter-9

さらにこのレンズの魅力を高めているのが、上述したJupiter-8 50mm F2同様、絞り羽根が円形に近いということ。
年代により違う可能性もありますが、多くは15枚の絞り羽根を備えていて、絞ったときも美しい描写を見せてくれますよ。

このJupiter-9は、L39マウントやコンタックスマウント(キエフ用)のレンジファインダー用も存在します。

Jupiter-9
LマウントのJupiter-9

ですが中古でよく見かけるのは、M42マウントの一眼レフ用のものです。

このレンズ、絞りが自動絞りではなくプリセット絞りなので、かつては一眼レフでの操作性の悪さがネックでした。
ですがいまでは、マウントアダプターでミラーレス一眼カメラに取り付ける場合、プリセット絞りのほうがむしろ使いやすいのです。

ぜひミラーレス一眼に取り付けて、ポートレート撮影で大活躍させたい、旧ソ連製レンズでは名玉中の名玉だといえるのではないでしょうか。

3.Jupiter-12 35mm F2.8

JUPITER-12(ジュピター12) 35mm F2.8 ブラック

こちらもJupiterを名乗る、ツァイスに源流を持つ旧ソ連製レンズのひとつ。

記事冒頭でもおすすめしましたが、Jupiter-12 35mm F2.8は、ツァイスのビオゴン(Biogon)に由来する対称型広角レンズです。

対称型広角レンズというレンズ構成。
少しでもオールドレンズに興味があるカメラファンなら思わずうなる設計です。
一眼レフカメラではミラーに干渉するため採用できない対称型広角レンズであるというだけで、レンジファインダーの名玉を連想してしまうのです。

ツァイスのビオゴンをもとに作られたJupiter-12 35mm F2.8は、対称型広角レンズならではの、後玉が大きく張り出た独特の形状が特徴。

JUPITER-12(ジュピター12) 35mm F2.8 Kiev用
↑画像はKiev用

このような設計のレンズに共通することですが、歪曲収差の補正は非常に良好。
まっすぐなところがまっすぐに写る広角レンズを楽しむことができますよ。

レンズマウントはライカL39マウントとキエフ(コンタックス)マウントがあります。
使いやすいのはライカL39マウント用ですが、使いにくさもあってキエフ用のほうが市場にだぶついている感があります。

JUPITER-12(ジュピター12) 35mm F2.8 Kiev用
↑Kiev用

35mm F2.8というスペックは手ごろで使いやすいもの。
もしこれからフィルムでレンジファインダーカメラを使うなら、広角に強いカメラの特性を活かし、このレンズを中古で選んでみるのもよいかもしれません。

デジタルでミラーレス一眼で使う場合、SONY製ミラーレス一眼では、フルサイズのものなら取り付けが可能です。
(APSサイズの機種は内部が干渉し取付不可)

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4.Russar 20mm F5.6

RUSSAR 20mm F5.6

うってかわって、次に紹介するのは超広角レンズ。

Russar(ルサール) 20mm F5.6は、ライカLマウントを採用した、旧ソ連製レンズの中でも非常に特徴的なスペックを持ったもののひとつです。

焦点距離20mm。
もちろん現在では特段珍しくなくなってしまった焦点距離ではありますが、このレンズがすごいのは、その発売年。

なんと1958年に、このスペックのレンズが送り出されてしまっているのです。

旧ソ連や共産圏の技術や製品というと、いまの目から見ると1970年代以降、西側に置いていかれてしまった印象が強いですが、それがなかなか、この時代にはまだ、東側も西側に伍して頑張っていたのです。

とくにカメラや光学技術では、旧ソ連や東ドイツは、西側に勝るものも生み出していたのであなどれません。

さて、このRussar 20mm F5.6は、レンズ構成的には対称型の広角レンズとなります。

RUSSAR 20mm F5.6

このような特徴的なレンズを生み出されたのは、軍事用途の光学技術を転用したため。

航空偵察用の超広角レンズを民生用に活かすことにより、当時としては画期的な超広角レンズを送り出すことができたのです。

Russar 20mm F5.6の描写面での特徴が、強烈な周辺光量落ち
一部では「トンネル効果」として喧伝されている周辺光量落ちですが、たしかに強烈な印象の画が手に入るのは認めざるをえないところです。

いっぽう、焦点距離が20mmということで、画角の面でも非常に印象的な写真をつくることができますよ。

この画角ともなると、ミラーレス一眼では周辺部のマゼンタかぶりや流れはどうしても目立つものとなってしまうでしょう。
もしこのレンズを最大限に活かすなら、中古フィルムカメラに取り付けて本来の描写を味わうのもおすすめです。

関連記事

こちらの記事でRUSSAR 20mm F5.6の作例を紹介しています。

レンジファインダーカメラ Canon P(ポピュレール)+ RUSSAR 20mm F5.6で日本三大銘茶の産地を訪ねてみた(作例あり)【旅×フィルムカメラ第12弾】

5.Industar-50-2 50mm F3.5

Industar-50-2 50mm F3.5

このIndustar 50-2(インダスター50-2) 50mm F3.5/span>はパンケーキレンズとして知られる旧ソ連製レンズ。
一眼レフ用で、M42マウントのレンズとなります。

パンケーキレンズといえば、国産ではペンタックスの40mm F2.8や、ニコンのGNニッコール45mm F2.8が有名ですが、それらは中古人気が高くとても高価。

その点、このIndustar 50-2なら、とても安価に、一眼レフ用パンケーキレンズを楽しむことができるのです。

パンケーキレンズといいますが、このレンズは一般的な薄型レンズの印象を遥かに超えた、超小型レンズ。
薄いだけでなく直径も非常に小さいのです。

Industar-50-2 50mm F3.5

例えば、ペンタックスKマウントのカメラにマウントアダプターKを介して取り付けた場合、Kマウントの内径に収まるか収まらないかくらいの大きさしかありません。

小型な分操作性は犠牲になっていて、絞りリングと指標が前面にあるのは少々つかいにくいところ。
いっぽう描写はテッサータイプゆえ非常に良好です。

超小型で軽量のレンズがほしい。
そんなときは、このレンズを試してみては。

ちなみにIndustarとは、インダストリアル、つまり「工業製品」というそのままの意味です。

Industar-50というレンズもある

なお、一眼レフ用、L39マウントのレンジファインダーカメラ用としてIndustar-50(-2がつかない)もあります。

レンジファインダーカメラ用は距離計連動で使える50mm F3.5のなんの変哲もないレンズ(下画像)。

Industar-50 50mm F3.5

いっぽう、一眼レフ用はM39 ZENITマウントという規格です(下画像)。

Industar-50 ZENIT用

(レンジファインダーカメラ用も、後部の筒を外すとM39 ZENITマウント用になるようです)

6.Industar-61 50mm F2.8

インダスター61

旧ソ連製レンズで最も有名なものといえば、上述したJupiter-8。

では、旧ソ連のレンズでもっとも中古で手に入りやすいものといえば?

そう、このInsustar-61(インダスター61) 50mm F2.8です。

このレンズは、至って平凡なレンズ。
レンズ構成は3群4枚のテッサータイプ。
ということでスペック上も、50mm F2.8と、特筆すべき所はありません。

ところが。
その「普通のレンズ」であることが、このレンズの魅力でもあるのです。

FED
Industar-61を装着したFED

普通のレンズということは、つまりもっとも売れたレンズ。
このIndustar-61は、FEDをはじめとする、旧ソ連の一般人民向けに販売された普及期に取り付けられて、大量に供給されたレンズでした。

多くの人が使う製品ということは、万人を満足させる性能が求められます。
これは、日本製のカメラでも50mm F2や50mm F1.8が実は良好な性能を持っているのと同じこと。

このIndustar-61も、派手さこそないものの、堅実な、破綻のない描写をもつレンズとして仕上がっているのです。
スペック面で無理がないことも、それを後押ししています。

いっぽう今の目から見ると、フィルム用ならではの味のある色乗りと、単焦点のテッサータイプならではのキレの良さは、充分にオールドレンズの魅力を味わえるもの。

旧ソ連のレンズの中でも、いや、すべてのL39マウントレンズのなかでももっとも中古が安価に手に入るレンズなので、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。

詳しくはこちら

Industar(インダスター)安価なロシアレンズの代表の特徴とは?

7.Industar-22 50mm F3.5

Industar-22 50mm F3.5(インダスター22)

もっともレンジファインダーカメラらしいレンズといえば?
そう、沈胴レンズですよね。

ライカのエルマー(Elmar)をはじめとする沈胴レンズは、ギミック、見た目を含め、オールドレンズを使う悦びを否応なしにかきたててくれるもの。
ですが、ライカレンズをはじめ、沈胴レンズは中古でも一定の価格がすることが普通です。

そんななか、実はとても安価に手に入る沈胴レンズがあるのです。

それが旧ソ連製レンズの、Industar-22 50mm F3.5

見た目からしてライカのエルマーを想像させるレンズです。
操作方法についてもほぼエルマー同様。
ただし絞りの操作は、操作部が大きいので本家エルマーより使いやすいかもしれません。
各部の寸法もほぼエルマーです。

Industar-22 50mm F3.5(インダスター22)

実はこのレンズの起源は戦前に遡ります。
1930年代、旧ソ連ではバルナックライカのコピーを試み、初期の「FED」を生み出しました。
そのFEDではレンズもコピーされ、エルマー同様の沈胴レンズが採用されたのです。

スペック的にも50mm F3.5とエルマーを連想させるもの。
レンズ構成的にはエルマー同様、オーソドックスなテッサータイプです。

というだけで一定の描写力が保証されていることがわかりますが、単に破綻がないだけでなく、描写力も格別。
絞り開放では柔らかく周辺減光もありますが、少し絞ればシャープなのはオールレンズ共通のこと。
深みのある描写で、中古レンズならではの楽しみが体験できますよ。

ただし沈胴レンズなので、ミラーレス一眼にマウントアダプターで取り付けるときには沈胴しないように気をつけましょう
カメラ本体の内部機構を傷つけてしまうおそれがあります。

関連記事

こちらの記事でIndustar-22の作例を紹介しています。

【オールドレンズ探訪記】Industar-22(インダスター) 50mm F3.5を使って光のゴーストシャワーを手に入れよう!(作例・撮影Tipsあり)

8.MIR-1B 37mm F2.8

MIR-1B 37mm F2.8

さて、ここまで紹介してきたJupiterやIndustarは、基本的にはレンジファインダーカメラに源流をもつオールドレンズ。

いっぽう、ここから紹介する2つのレンズは、一眼レフ用ということでまた異なる味わいをもっています。

MIR-1B 37mm F2.8(ミール1B)は、レトロフォーカスタイプの広角レンズ。

このレンズが生まれたのは1958年のこと。
レトロフォーカスタイプとしては比較的初期のものとなります。

それでいて、21世紀に入るまで作り続けられたので、中古店で出会うことも稀ではないと思います。

MIR-1B 37mm F2.8

実は設計上、東独カール・ツァイス・イエナのフレクトゴンを参考にしているとも言われています。
37mmという独特の焦点距離(準広角?)も、その時代ならではのものかもしれませんね。

初期のレトロフォーカスレンズということで描写に多少の癖はありますが、むしろその味をこそ楽しみたい中古レンズだといえるでしょう。

ちなみに「ミール」というと、旧ソ連の宇宙ステーションと同じ名称ですが、ロシア語では「平和」または「世界」を意味する単語となります。

MIR-1B 37mm F2.8

9.Helios-44 58mm F2

Helios-44 58mm F2

Helios-44 58mm F2は、一眼レフ用の旧ソ連製レンズの中でももっともメジャーなもののひとつ。

旧ソ連が崩壊しても作り続けられたフィルム一眼レフ、ZENIT(ゼニット)に供給された標準レンズです。

58mmという長めの焦点距離は、日本製のカメラなら1960年代前後のものを連想させるレトロなもの。
それでいて開放値はF2とそれなり。

Helios-44 58mm F2

と、スペックだけ見るとあまりピンと来ないレンズかもしれませんが、実はこのHelios-44 58mm F2、特徴的な描写を楽しむことができるレンズでもあるのです。

それが独特の「ボケ味」です。
このHelios-44は「ぐるぐる」ボケが味わえることで知られており、そのためだけにこのレンズを手に入れる方もいるくらい。

とにかく、絞りを開放にしたときの猛烈なボケ味は、このレンズでしか味わえません。
美しいボケやふんわりとしたボケ、優しいボケといった表現をすべて超越した描写。
旧ソ連のレンズが生み出した名玉なのか迷玉なのか迷うレンズですが、レンズの楽しみをより幅広くしてくれる一品であることは間違いないでしょう。

Helios-44 58mm F2

ちなみにレンズマウントはM42マウントのものが多いですが、初期のものには、M39マウントというものも存在。
M39マウントのものは、アダプターを使うことでM42マウントで使用できます。

さらに、M42マウントのものにはプリセット絞りのものと自動絞りのものが存在。
自動絞りの個体には、型番に「44M」のようにMが入っています。

Heliosの語源は太陽
光を切り取るレンズらしいネーミングです。

ZENIT
Heliosを装着したZENIT

関連記事・作例

Helios-44の詳細と作例を以下の記事で掲載しています。
ぜひ併せてご覧ください。

Helios-44 58mm F2 安価なM42マウント旧ソ連製オールドレンズの代表格

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旧ソ連製レンズ 中古購入のポイント

さて、そんな旧ソ連のレンズは、中古レンズとしては非常に癖のある製品であるともいえます。

中古を探すときにはいくつかのポイントをチェックしましょう。

個体差が大きい

旧ソ連で作られたレンズは、旧共産圏の製品のため、ひとつひとつの個体差、品質のばらつきが大きいです。

購入するときに複数から選べるときには、実際に絞りやピントリングを操作して、操作感がよいものを選ぶようにしましょう。

時代が古いもののほうが作りが良い

この記事で紹介したようなレンズは、旧ソ連時代から、ソ連が崩壊したのちも、非常に長期間作り続けられました。

もしこれから中古を探す場合、旧ソ連製のレンズは得てして、古い時代のもののほうが作りが良いことを心に留めておきましょう。

これは旧共産圏で作られた製品ゆえのこと。

旧ソ連の経済が比較的うまく回っていた1950年代の製品は仕上げもよく、手間をかけて作られているのですが、時代を経るにつれ各部が省略・コストダウンされ、仕上げもどんどん悪くなってしまいます。

描写そのものが悪くなるわけではないですが、使用感に大きく影響するので、もし選べるなら古い時代のものを選んだほうがよいかもしれません。

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光学系のキズ・カビ・ホコリを徹底チェック

これは他の中古レンズにも共通することですが、とくにレンズの光学系がきれいかどうかをチェックするのは非常に重要。

カビの発生やホコリの混入はもちろんですが、旧ソ連のレンズでとくに気をつけたいのがレンズへのキズ。

旧ソ連製レンズは外装の状態があまりよくないものも混じっていますが、とくにそのような個体では、レンズ前玉にキズがついていないかを確認しましょう。

また、前玉に拭き傷ができてしまっていることも考えられます。
拭き傷のあるレンズは中古はとても安価になりますが、描写への影響が考えられるので、ベストな描写を得たいなら、もちろんもっと状態がよいものを探すのがベターです。

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旧ソ連製レンズで中古オールドレンズに入門してみませんか?

値段が安価で入手が容易。
それでいて描写は一級品。

そんな旧ソ連製レンズは、中古レンズ・オールドレンズへの入門に最適。

ぜひあなたも、旧ソ連のレンズでオールドレンズの世界に足を踏み入れてみませんか?

その先には中古レンズの豊穣な世界が広がっていますよ!!

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更新履歴

2022年8月25日

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著者紹介: サンライズカメラ

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